そして最後にぶっ壊す
ゆっくりゆっくりしていきます。
悪魔によるチューニングが終わり,ある程度この体にも慣れてきた。初見ならまだしも爪の先までデザインした腹黒天使のおかげか,そこまで時間はかからなかった。
「やっと手に入れたぞ,この体!」
なんてラスボスのように言うが本当に嬉しい。これで一つ夢が叶うのだ。二週間で有名になる。この体なら一週間,いや五日もあれば出来るかもしれない。
『せき様,まるで見違えるようでございます。そのお身体で世界へ行きますか?』
「勿論だ。」
寧ろこの体以外ありえない!
『ではその前にこの世界で生きていくためのチュートリアルを行います。ステータス等の割り振りはチュートリアル後,ご自身が必要だと感じたものへ割り振ってください。では,チュートリアルを開始します。』
自分はAGI極振りと決めているのだが,確かにこの体ならば滑舌を良くする為にと言うのは些か早急かもしれない。天使が作った体はまさに化け物だ,滑舌もそれに準じている。だが,チュートリアルはスキップする。化け物が人間用のチュートリアルに当てはまるのかという疑念もあるが,大半の理由は手探りが好きなのだ。知らない事を教えてもらうのではなく,自分で探す。情報を鵜呑みにせず,自ら確かめる。その方が自分に,三人に合っているのだ。
「チュートリアルのスキップは可能か?」
『可能ですが宜しいのですか?』
「構わない。」
『ではチュートリアルの報酬を渡し,ステータスの割り振り後,世界へ送り届けます。』
チュートリアルを受けてないのに報酬とはこれ如何に,だが貰えるものは貰っておこう。目の前の宝箱を開けると...
-初級ポーションを5個手に入れました-
頭に直接響くように音声が流れた,こういうのにも慣れていかないとな。しっかし,初級と称されるポーション5個のための宝箱としては少し大きい気がする。これが通常ならそれまでだが調べてみる価値はあるだろう。
『何をなさっているのですか?』
「宝箱の二重底,二重蓋等の仕掛けがないか調べている。」
『そのような機能があるとは記憶しておりません。』
確かに無さそうだ。チュートリアルAIが嘘をつく事は無いと思うのでこれ以上は無謀だ。それじゃあ...
「最後にぶっ壊す。」
『は?』
AIの困惑とは面白いものが見れた。宝箱に仕掛けがなくともその材料に使われていることもあるし,そもそも材料自体が貴重だったなんてよくある話だろう。しかし,壊すとは言ってもどう壊そうか。いくらこの体が化け物だからといって筋骨隆々な訳では無い,まぁとりあえず殴ってみるか。
ゴキッ
嫌な音が木霊する。綺麗な指は赤く染まり,宝箱にかすり傷。得るものはあった。この空間でも壊れる(・・・)のだ。息が出来なくても死なない空間なら壊れる(・・・)こと自体無理なのかと思ったが違うらしい。そうだ,ステータスの割り振りをしてみよう。割り振り前の素の体でかすり傷を付けられたのだ。STRに極振りすれば余裕で壊せるだろう。だが,その後で躓く可能性がある。もし素早い敵なんて出てくれば...
(そのままだといたちごっこですよ。)
それもそうだ,このままでは埒が明かない。
(極振りから離れたらどうだ?)
いや,中途半端は嫌いなんだ。中途半端とは少し違うかもしれないが極振りは決定事項だ。
(なつ...今はせきですね。せきはどのように考えていたのですか?)
当初の予定...AGIの極振りか...足りない攻撃力も速さを乗せれば破壊力を産む,攻撃が当たらなければ耐久力なんて関係ない...いいかもしれないな。
(ではそれにしましょう。次に元素ですがどうしますか?)
元素...この世界は四元素と呼ばれる火水土風の四つの内一つを体に宿し,属性と呼ばれる個性と結び付けて魔法を使う。元素がキャンバスで属性が絵の具だと例えられていた。キャラメイク時に元素は選べるが属性は勝手に設定される運要素らしい,別アカで試しても必ず同じ属性なので案外魂の色なのかもしれない。僕の属性は...
ーステータスー
【名前】玖原 せき
【Lv】1
【種族】人間?
【性別】女
【元素】風
【属性】無-偽,聖,闇
【職業】なし
【HP】100
【EP】100
【STR】1
【VIT】1
【ELE】1
【MIN】1
【AGI】1
【DEX】1
【スキル】なし
【装備】
[頭]なし
[胴1]旅人の服[胴2]旅人の下着上
[右手]なし
[左手]なし
[腰1]旅人のスカート[腰2]旅人の下着下
[右足1]旅人の靴下右[右足2]旅人の靴右
[左足1]旅人の靴下左[左足2]旅人の靴左
え?種族が『人間?』ってなっているのはまぁ理解出来るけど属性が3つって何?