その時は来ない
吸血神鬼ラドニアは決して弱くはない。
かれこれ数千年生き残ってきた(・・・・・・・)神だ。それがどうだ?この世界に来て二日目の小娘に翻弄されているではないか。ニアにせきを殺すつもりはないのだろうがあれは本気で血を欲している。せきには悪いがあの執着から解放されて良かったと思っている。ニアの幻想が聞いていないのを見るに能力の覚醒は終わった。だがまだ足りない。あのクソメガネは正直神の領域に足を踏み出している。理由が「守るべき存在より弱いのはダメ」とかいう理由なのがもう酷い。せきの記憶と照らし合わせればストーカーが急に「君を守る為に強くなる」と言って格闘技で世界チャンピオンになった後にストーカーに戻った感覚だ。意味が分からない。果たしてそれが嬉しいのか。そんな訳がないだろう。ゴキブリが居なくなったと思ったらスプレーの耐性付けて一家総出で帰ってきた気分だ。もう生理的に無理過ぎて制約が無ければ殺した後に時を戻して記憶も存在も全て巻き戻して根源すら消してしまいたい。はぁ...そろそろ止めてあげるか。今のせきは正直防御機能しかないアンチウイルスソフトだ。まぁそれだけでいいほど防御力が高いのだが,それだけではメガネには勝てないだろう。あれの実力は本物だ。次に覚醒させるのは闇か,聖か...どちらも捨て難いな。闇を覚醒させればせきの身体能力は飛躍的に向上し聖を覚醒させずともあれを倒せたが,その後が心を折るには至らなかった。かと言って聖を覚醒させなんてしたが心を折りすぎて自分に執着させてしまう。あの後は本当に大変だった。大変過ぎて諦めて戻してしまう程には。で,三回目の今回はせきちゃんを覚醒させたけども...もう一つ覚醒させなければならないなんて...どっちに転んでもねぇ...いっその事残り二つも覚醒させて見るか...でもその前に。
『ほんとに止めないと私のモノがまた取られそうだ。』
――――――
(大丈夫か?せき。)
「きっついねぇ結構。」
あぁきついよ本当に。ラドニアが本気ならもう死んでるだろうよ。ラドニアの目的は僕の血だし...殺さないよね?正直吸血鬼の執着についてそれ程重くとらえなかったのをすっごく後悔してる。かと言ってはいどうぞとこの身を差し出す訳でもない。
(ヴァンには雌出してたクセにぃ?)
それとこれとはまた話が別なんだよなぁ。しかも雌じゃなくて雄でしょ。可愛い子を守りたい下心満載のさぁ。
(いいや,ありゃ雌だな。兄貴に群がる女と同じ顔だった。)
「は,はぁぁあ?!...あっぶねぇ!ちっと休んでろせき!」
悪魔が身体の主導権を握る。ちょっとあの雌共みたいだと言われて動揺してしまった。
『お主...せきではないな?しかし...どうも本能がせきだと言っておる。多重人格の類いであろう。つまり...血はそのままで心を壊す心配もせんでいい状態か...くはは,なんとも都合が良い!』
「マジかよこいつ!」
(一応僕も見てるんだけどなぁ...)
「せきも引いてんぞ!」
『それがなんじゃ?どうせせきは元々妾の事を好いとらんかったではないか。故にちと愛し合うはーどるが高くなるだけの事,萌えるのう!』
(落ち着いてはないけどもう大丈夫だよ。)
「だけど!...いや拒否権はないけど?」
『せき...諦めて妾と共に行こう!さぁ...!』
「『残念ながらその時は来ないよ。』」
僕とヴァンでセリフが被る。
『Replay。』
その瞬間,僕は太陽の下に居た。
『嬢ちゃん!』
「?デイル君じゃん,どしたの?」
僕がぼーっとしてるとデイル君が走ってきた。死にそうな顔してる...
『どうしたも何も!何に殺された?まさか2階層以下でか?!』
「デイル君うるさい,それに僕死んでないし。」
『はぁ?!ここが何処か分かってるのか?!俺が渡した人形のチェックポイントだ...ここに飛ばされたってことは嬢ちゃんが死んだ以外に...!』
「...はいこれ。」
『そうそれだ。ちょっと貸してみろ,この人形の状態が嬢ちゃんの死んだ時の状態になるんだよ,傷ついた場所が黒く変色...無傷だな?...っかしいなぁ,老衰じゃ発動しないんだが。』
「デイル君すっごい失礼だよ?」
十中八九ヴァンが何かしたんだろうなぁ...あぁそうだ...
「デイル君...クラデウスダンジョンは変態の無法者が作ったご馳走生産所だったよ...」
報告は大事だよ...ね...
鳴潮...スカーくんとバイクの敵が好き(フル見た目)




