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飯を食べてたらなんか勧誘されたぞっ

一人称と三人称で、色々迷ってます。

「もう周りに誰も居ませんわよね、でしたら入ってしまいましょう」


 という金髪少女の言葉によって、俺はあの大きな都……ロンゴディートへと入っていた。


 前には彼女がいて、その後ろに俺がいる。隣ではまるでしっかりと控えるように、お爺さんがいた。初めて会ったにも関わらず。彼らと俺の空気は、割と遠くない。


 そりゃあ、彼らにとっては俺は恩人ってことに……なるのだろうか。なるんだろうな、あの感じだと。


「はい、着きましたわ!」


 中に入って早々。少女は嬉しそうに叫ぶ。俺もその言葉を聞いていたが、思ってしまうのは別の感情であった。


「初めての場所だ……」


 思わずその言葉を呟いていた。初めて見るにぎわいがそこにあった。前いたあの町は、人はいたけど、狭いし小さいし。人だって、血気盛んな冒険者たち。喧嘩はめちゃくちゃあったけれど、それぐらいだ。


 だがロンゴディートは違う。両目で見ても壁が届かないレベルで広い。そこにぎっしりと、人という人がいる。なんかたくさん建物がたっている。こんな場所、俺にとっては初めてだ。ここまでくると、別世界だ。


「やばいな、何がやばいって、端っこが見えない時点でもうやばい」

「ほほほ、ヤバさがはっきりと伝わってきますな!」


 お爺さんが笑った。実際そうなんだから仕方がない。俺にとって一番やばいのは、やっぱり目で見ることができないくらい広いことだと思う。


 冒険者だった時は、エリウッドたちが目としてもいたからな……。ちゃんと役目という役目があった。例えばリーダーのエリウッドはみんなを守りながら前衛で剣を振るう。トットさんは遊撃、メルティーとオフェリアは魔術で攻撃と回復。


 そんでもって俺は……。火の弓や爆発する弓で相手を燃やしたり、地面を燃やして逃げられなくする役。まああとはランプに火をつけたりもしたな、うん。


 まあそんな感じだ。戦闘ではあまり役立ってない……いや、役立ってないというわけではないはずだ。エリウッドたちも言ってたしな。


 ともかく、そんな旅は過去のもの。今はもう、俺一人の旅だ。俺の目で見たものしか、存在しない旅になる。早速挫きそうだけど。


「いや、都だし広い大きいとは思った。馬車でもお姉さんがおっきなとこだと」

「ここまでおっきなとこだと思わなかったと。一度行ったことはありますが……圧倒されましたからな!」

「行ったことがあるんだな」

「ここは心を落ち着けられる場所なのです。割と必要なのですよ、色々と。特に……ここまでの年だと」


 おじいさんはそう言って、目の前を見据えた。当然その場所には、金髪の少女が見える。


「特に、わしやあの子などにはそういうものが非常に……」


 呟いた言葉が、偶然に耳に入った。


「あの、さ」

「どうされましたかな?」

「もしかしてあなたは彼女の従者だったり?」


 気になって尋ねてみた。まあ、よく考えてみればそうなんだろうけど。彼女、縋り付くこの人を全力で控えさせてたし。


 ただ、気になった。なぜかって。目の前のあの少女を見る、彼のその表情はなんというか。どこか遠く、無理をしているような。そんな感じがしたもので。


 敬意はあるのだろう。だけれど敬意はあるにしては……なんというか。その敬意は、別のところにあると思う。よくわからないけど、これは……。


「うむ。わしは……そうじゃの。あのお嬢様の従者を担当しております」

「なるほどね、でも……俺にはなんかなあ」


 当然といった感じで、おじいさんはそう返した。その言葉に開きがあったのは、俺は逃さない。


「今の言葉からちょっとだけ読み取れたけどさ。あなたは、敬意は持ってるんだと思う。でも……従者という感じではないと感じててさ」

「な、なななななんてことを言うのですか!? わしのこの従者魂を疑うとでも!?」

「狼狽すぎだなって。と言うか従者っていつも冷静じゃないか。こんな感じでお嬢様を守れるのかな……とは思う」

「ぐぬぅっ!」


 おじいさんは仰け反った。


 確かそうだった気がする。冷静に冷酷に、相手に対して命を投げ出してこそ、付き従うものなのだ。と頭の中で思う。


 ……ふっと浮かんだけど、なんで俺がこんな考えのやつ知ってるんだろうか……とも一瞬思ってしまった。昔なんかあったんだろう。


「だから俺は、こう思う。あくまでこう思うと言うわけだけど……。おじいさんは、職業で従者というのをやってるわけじゃない」


 思ったことを続けて口にする。


「きっとこれは、職業じゃなくて……。そうしないといけないから、そうしたいから従者になったんだと。それはきっとあの、金髪の子への……」

「お……おぉ、おおお……あなたさま……あなたさまは……!」


 そういっているうちに、おじいさんがぷるぷる震え出した。唸り声を上げながら近づいて……俺に手を当てた。


 そして。


「なんと……なんという洞察力なのですかッッ!!」


 感動した心持ちで……そう一気に叫ぶのだった。


「……おっと?」


 困惑する俺。


「なんという完璧な洞察力……まさかここまで推測されてしまいますとは……!」

「完璧って。いやちょっとそんなに感動をするもんなのか」


 その感情にびっくりしている。かなりグイグイ来るとは思ってたけど、ここまでか。


「……そこまで言われてしまったら、もはや隠すわけには行きませぬ……。わしらの秘密を」

「隠し事? 秘密? どういうことだ?」

「かなり大きな秘密があるのです……。実はわしらは……」

「サンタクルスー、それと旅の方も。こんな場所で言い争っては行けませんわよー」


 そんな中で少女の声が聞こえた。俺とおじいさんが話している間にも、歩き続けていたようだ。呑気な感じ。


「秘密はまた別のときに……ですな」

「結局言うのか……その時はそうする」


 ふっとキザな表情になり、おじいさんは言う。俺は答えるしかなかった。


「それよりも、私お腹が空いてしまわれましたのですわ! えぇ、ご食事にしても構いませんこと?」

「あ、確かに食事はいいな……って」


 という少女と俺の声と一緒のタイミングで、ぐぅ、とお腹がなる。


 よく考えたら、馬車の中でご飯食べてなかった。あの男の子からサンドイッチをもらって……馬車の中で食べるっていったけど食べてなかった。あの後話してすぐ寝てた。


 あのサンドイッチはまだ大丈夫だろう。それを朝昼兼用の飯にしよう。


「ああ、俺はちゃんと食事はあるけど……。お二人はどうす……って、俺が言う話じゃないな、うん……」


 二人に問いかける……直後に後悔する。


 彼女たちは貴族なのだから、そりゃあ、豪勢な食事を食べるのだろうとおもうのだ。まあきっと、高級な何かだと思う。俺には縁遠い何か。


「すまん、とりあえず……忘れてくれ。俺は近くでサンドイッチ食べてるんでさ」

「ふむ?」


 そう言いつつ、俺はサッと離れていく。まあいい、食事しよう、食事だ。




 そうして歩いて数分。噴水のヘリへと座ることができた。


「豚を焼いたのを挟んだサンドイッチだな」


 馬車で食べようと思って、結局食べられなかったやつ。その包みをとって、手に持つ。


 いやでかいな、確実に片手で持てないサイズだ。白いひら焼きのパン。空洞な中に、大量の肉が入っている。こういうのを、男が好きそうなやつだ……って言ってたのは、確かメルティーだ。


「確かにこういうの、エリウッドがうめーうめー言いながら食ってたけどな」


 両手で持つのもかなり苦労しそうなそれを、落とさないようにしっかり手で持って。そのまま口に運ぶ。


 もぐっ。


 パンを切る音が口内片耳を伝って聞こえた。


 歯切れがすごくいい。ただ硬いだけでも、ただ柔らかいだけでもない。


「うっま……!!」


 あの店のサンドイッチは何度か食べたことある。食べたことあるけど、今までで一番うまく感じたかもしれない。


 それはきっと、この後このサンドイッチを食べることはそこまでないからという割と寂しい理由だからだろうけど、それでもうまいもんはうまかった。


「(ロンゴディートでもそんな場所はあるか?)」


 食事はあんまり考えたことはないが、考えた方がいいかもしれない。


 この先、一人で旅するならなお。


 そんなことを考えながらひたすらに食べ進めた。


「……食った」


 そうして両手サイズのサンドイッチを食べ切って、小さくつぶやく。その量はすごくて、お腹減っていたのにすぐに満杯になる程。腹をちゃんと満たし切ったのだ。


「……すごくデカかった」


 ふう、とため息をつきながら俺は立ちあがろうとする。


「さて、一人になったし。そろそろ……」


 オフェリアからもらったものを確認しなきゃな……と思った。ガサゴソと服の中を弄る。


 それは袋で、ずっしりと重たかった。何が入ってんだと言わんぐらいに重たかった。


 それを開けようとする。すると。


「あ、さっきぶりですわね!」

「おお、奇遇ですな!」


 そんな声を聞いた。少女の声と、おじいさんの声。


 その声を聞いて、振り向けば。金持ちにはやけに似つかない、まっ黒なパンを持って、近づいてくる彼女たちの姿があった。


「再び会えてうれしく思いますわ、旅の方」


 近く。空いていた噴水の場所へと座る。金色の髪の毛、白い肌。同じ白で塗られた、豪勢な服。どっからどう見ても、大金持ちの令嬢といった雰囲気。そんな彼女が、質素にも程がある黒パンを持っている光景。信じられるか? とは思った。


「そういえば、自己紹介がまだでしたわね?」

「自己紹介……」


 グイグイくるな、やっぱり。そう心の中で思う間も無く、少女はいう。


「私の名前はエリザベス=ノーブルング=ノヴァルシュミッター。エリーと言ってくれればよろしいですわ。で、こちらはサンタクルス。私の従者のようなもの。よろしくお願いしまして?」

「エリーとサンタクルスね。俺はプッチ。従者のようなもの……。ああ、うん。まあとりあえず、よろしく」


 サンタクルスと呼ばれたおじいさんの方を見た。小さく笑っているが、その笑いは……笑うしかねえと言ったような、そんな笑み。


「プッチさん……。あなたはこれから何をするとかありますの?」

「ん? 特にないさ。元々冒険者だけど、もう過去のものだしな。ただ何かを……何も考えちゃいないけど」


 冒険者など過去のもの。特に何をするとかそう言ったものでもない。


 そう言ったことを告げた途端、エリーの顔色が変わった。


「まあ、そうですの?!」


 嬉しそうにいうと、彼女は俺の手を取る。


「プッチさん! これも縁なのでは!」

「縁ってどういうことだ?」

「決まっていますわ!」


 そういうと、ずいっと身を乗り出して……。


「プッチさん、あなたには……私の従者になる権利を差し上げましょう! ぜひ、なるといいですわ!!」


 そんな言葉を聞いてフリーズしたので……。


「何ですって?」


 そんな聞き返ししか、俺にはできなかった。

ずいぶんグイグイくる子ですね。

プッチにとっては苦手かもしれない。


あっちにリソースを投入しています。

もうしばらくお待ちください。

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