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迫るタイムリミット

「……は?」


 信じられない光景に、僕は思わず声を漏らしてしまった。

 石田が伊藤さんから聞いた話によると、文学魔法は火と相性が悪いらしい。だから火、しかもあんな派手に爆発する魔法を出すはずが無いのだ。


「別に不思議な事じゃないよ。紙を燃料にするよう工夫すれば、絶大な火魔法が打てるって行代さんが言ってた。それよりも、のんびりしている暇は無いんじゃない?」


 そう言うと、在原康子(やすこ)は自分の後ろにあるたき火を指で示した。


「この街中から集めた魔力は、あのたき火に集中してる。そして行代さんが作った短冊をあのたき火で燃やしているの。たき火から出てる煙が消えたら魔法が完成して、あたし達が望む大人と子供の恋愛を受け入れる世界が完成するってワケ」


「……本当なのか?」


「普通なら大規模過ぎて出来ないって行代さんが言ってた。理論上は少なくとも日本中の魔力を吸い取って成功率が五分五分らしいけど。でも、あたしの『特技』を使えば可能になる」


 在原康子の『特技』? それは一体……。


「『概念強化』。あらゆる物の概念を強化する特技。普通に生活していれば気付かないけど、魔法を知っている人間だったら気付けるどころか喉から手が出るほど欲しくなる。弱い概念でも超強力な魔法が出せるからね」


 『概念強化』。初めて効いた特技だ。

 だが、説明を聞いて納得してしまった。あれはほとんど魔法の領域にある特技だ。

 伊藤さんの説明では、魔法とは『概念の抽出』。その概念が強くなれば、魔法も強くなるのは少しでも魔法の情報を知っていれば気がつく事だ。


 そして在原康子の『概念強化』を使い、たき火を使った魔法を強化し、不可能と言われる規模の魔法を行使する。それが在原康子と西行代の計画なのだろう。


 この計画を止めるには、早くあのたき火を消さなければならない。だが、近づけさせてもらえない。

 ロケットランチャーみたいに猛スピードで飛んで爆発する短冊が、山のように僕を狙っているからだ。


「……どうすれば」


 ――あ、この手があった!!


「行くぞ!!」


 僕は、全力で在原康子の元へと駆け出した。


「……なに? お兄ちゃん、そんなに死にたいの?」


 当然、在原康子の攻撃は僕を集中的に狙うだろう。

 だが、僕には攻撃を避ける手段があった。


「……残念だったね」


「お兄ちゃんが縮んだ? いや、お姉ちゃんになった!?」


 僕は特技を使って女子になると、小柄になる傾向にある。つまり、的が小さくなる。

 足を使った移動と体型の変化。この2つを合わせ、徹底的に狙いを付けづらくする。それが僕の考えた作戦だ。


「く、くうぅ……」


「狙いがずれてきているね」


 在原康子は、明らかに攻撃の精彩を欠いていた。もう割と至近距離に居ると思うのだが、攻撃が全く僕に当たる気配がない。


 そしてとうとう――。


「食らっとけ!」


「うっ……」


 在原康子に強烈なボディブローを入れ怯ませ、その間にたき火へ一気に接近する。


「終わりだ!!」


 足の筋肉を瞬間的に強化し、たき火を蹴り崩した。

 ガラガラッ! という木材が崩れる音と共に、たき火は池へ落下した。燃えかけていた短冊も一緒に。


「うっ……」


 たき火が完全に池に沈んだ瞬間、うめき声が聞こえた。

 声のした方を振り返ると、在原康子の意識がなくなりかけていた。意識がなくなるまで強く殴った覚えは無いんだが……。


「……これで、お別れだよ……」


「お別れって……」


「この計画が失敗したとき、私と行代さんが死ぬ仕掛けをしていたんだ……。そうなるように文面を組み立てた短冊を先に燃やしておいてね……」


「なんでそんなことをしたんだ!」


「高男くんがいない世界なんて、苦しいだけだから。行代さんは……娘に謝るためだって言ってた。娘のために世の中を変えようとしたのに、変えられなかった無力なお母さんを許して欲しいって」


 そして、在原康子の呼吸と脈拍がどんどん弱くなっていき……。


「高男くん……。今から、そっちに行くから……、いっぱいいっぱい、あたしのこと、愛してね……」


 それが、最後の言葉になった。




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