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魔法の痕跡

「あの、質問ですが」


 雨月が手を上げ、伊藤さんに質問した。


「話を聞いている限り、特技との違いがよくわかりません。さっき伊藤さんは魔法のことを『概念の抽出』と言いましたけど、それって概念の抽出を行える『特技』と言えるのでは?」


 確かに。特技は様々な種類があるが、概念の抽出も『特技』の一種に見えなくもない。

 それに対し、伊藤さんは即座に答えた。


「うん。その質問、よくあるんだ。魔法の存在を初めて知った人から特によく聞かれるよ。

 では雨月君の質問に対する答えだけど、『特技』と『魔法』では決定的に違う点がある」


「決定的に違う点?」


「『特技』は、あくまで身体能力の一種だ。だから特技を使うと体力を消費する。まぁ、特技の種類によっては違いがあるんだろうけど、間違いなく自分の身体で作られたエネルギーを消費する。

 でも、魔法は違う。『魔力』を消費するんだ」


 『魔力』。かなりファンタジーな概念の名前が出た。


「魔力は人間を含めた生物や大地、大気に漂っている。どこの魔力を使うかは術式によって違ってくるけど、とにかく魔法を行使するには魔力を使わなければならない。これが決定的に違う点だ。

 この魔力を感じ取ったりコントロールしたり出来る人が、魔法使いとして素質がある人とも言われているね」


 そして伊藤さんは、色々と特技と魔法の違いについて語ってくれた。


「他には、全ての魔法はちゃんと学びさえすれば誰でも使えることが特徴だね。ほら、特技の場合は他人の特技を使えないだろう?

 もちろん、魔法を扱える素質がある事が大前提だけど」


「あの、『全ての魔法』ってどういう意味ですか?」


「ああ、そのことを説明しなければならないね、石田君。さっきも言ったように魔法は概念の抽出なんだ。で、この概念の抽出を行うのに様々なアプローチがある。

 例えば魔方陣を描く『幾何学魔法』、動植物を触媒にする『生物魔法』、太陽や月、星の位置関係や込められた意味を利用する『天体魔法』などなど、実に様々な方法がある」


 そしてこれらの魔法は、魔法の素質さえあればしっかりと学ぶことで誰でも使用可能らしい。もちろん、向き不向きはあるそうだが。


「ところで、伊藤さんが使う魔法って……?」


「それは秘密。魔法使いは、自分の事について多くは語らないものなのさ。同じ魔法使いに対してもね。

 さて、それで君たちに魔法のことを教えた理由だけど、あの博物館から私用された魔力の痕跡が検出されたから。それで僕が呼ばれて監視カメラなんかを確認し、展示物を盗み出した方法と石田君へ行った攻撃が魔法だと確認できた」


 それは、つまり。


「展示品を盗み出した犯人は、魔法使いだ」




「行代さん、手は大丈夫?」


「大丈夫よ、康子ちゃん。少し腫れちゃったけど、そのうち治るだろうって」


 ごく普通の住宅街にある、ごく普通の家。ここに、40歳近くになる女性と12歳の少女が暮らしていた。

 一見するとどこにでもいる母子に見えるが、本当の親子ではない。そして、養子縁組をしているわけでもない。


「それに、目的の物は手に入ったわ。これで、次のステップに進める」


 女の名前は『西(にし)行代(ゆきよ)』。今回の博物館強奪事件を引き起こした人物だ。


「そっか。これで一歩、あたし達の理想の世界に近づいたね」


 少女の名は『在原(ありわら)康子(やすこ)』。訳あって、行代と同居している。


「そうね、康子ちゃん。次からは康子ちゃんにも色々と手伝って貰うから」


「任せて。あたし達の力で、世界をひっくり返してやるんだ!」


 2人の関係は、最も近い表現で言えば『共犯者』だった。




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