その⑬
僕は人形のように過ごした。病気の母さんのように、一日中布団の中に横たわり、腹が減ったら、ゼリーや水を飲んで紛らわせた。眠り過ぎて頭痛がしたときは、シャワーを浴びて無理やり治めた。そして、また眠った。
頭の中では、自殺のことしか考えていなかった。どうやって死のうか? 首吊り…、リストカット…、服毒…、入水、焼身、飛び降り…。知っているもの全て並べいったが、どれも苦しそうなものばかりだった。どうすっかな? 痛いのは嫌だし…、苦しいのや嫌だ。だけど、死にたくて死にたくてたまらない。このまま布団の中で、眠るように死ぬことはできないだろうか? ああ、死にたい。早く死にたい。
僕の未来は「空虚」なんだ。僕が自殺する未来は、決定づけられている。
そう言い聞かせたとしても、身体が動かなかった。生に縋りついているのではなく、ただただ苦痛が嫌なだけだった。
死にたいと、痛いのは嫌だ。の狭間を彷徨い続けて惰眠するうちに、時計の針は三百三十六回転した。そして、昼の十一時に差し掛かるころ…、美桜から連絡があった。
『ねえ、どうして来てくれないの?』
「……ごめん、体調が悪いんだ」
僕は電話越しにそう言った。長い間喋らなかったせいで、本当に体調が悪い風の声になっていた。
美桜が息を呑む声がする。
『それならそうと言ってよ。どうせ、私以外に頼れる人なんていないんだからさ! もう…、わかった、すぐに行くから、待っててね!』
「え…、あ、ちょっと…」
美桜はそう言うと、電話を切った。
僕は「通話終了」と表示されたスマホを眺めて、しまったな。って思った。
「……」
美桜が、僕のアパートにやってくる。
馬鹿な話だ。ただそれだけの理由で、今まで自殺しあぐねていた僕の中に、「覚悟」が生まれた。
今の僕は、美桜のことを見ることができない。僕の「未来」を受け継いで、光ある道を歩む彼女の姿を見たら、間違いなく発狂してしまう自信があったのだ。
僕の心が完全に壊れてしまう前に、彼女のことを見てしまわぬ前に、この世から消えてしまおう。
そう思った僕は、すぐに行動に出た。




