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もう未来なんて売らない  作者: バーニー
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その⑥

 どのくらい眠っただろうか?僕が目を開けた時、部屋の中が暗くなっていた。

 あれ? もう夜か? と思いながら身体を起こす。センサーが反応して、部屋の明かりがついた。その白く煌々とした光に、思わず顔を背ける。


「まぶし…」


 乾いた声でそう呟きながら、壁の時計を見る。

 時刻は、十時だった。


「……あれ?」


 美桜が帰ってくるのって…、確か、八時だったよな。

 デジャブのような光景に、僕は舌打ちをした。


「ったく、また編集とご飯か…」


 頭がぼんやりとしていて、まだ眠っていたかったが、女の子の部屋に泊まるわけにもいかなかない(美桜だったら許してくれそうだが)。終電も近づいていたので、僕は床に置いていたスマホを掴み、ポケットに入れた。荷物を持って、部屋を出る。

 扉を閉めると、オートロックが作動し、勝手に施錠された。


 また明日来るか…。


 エレベーターで一階に降り、暖色の光に包まれたエントランスを通って外に出た。

 春になったとは言え、夜風はまだ肌寒い。Tシャツで来たことを後悔しながら、人通りの少なくなった道を歩き始める。

 その時だった。


「大丈夫? 美桜ちゃん」


 神宮寺さんの声が、道の向こうから聞こえた。

 僕は立ち止まって、歩いてくる人影を見た。外灯と逆光になってわかりにくかったが、あのシルエットは、神宮寺さんと美桜のものだった。


 神宮寺さんが、ふらふらとする美桜に肩を貸し、「大丈夫?」「もうすぐマンションだからね」と言いながら近づいてくる。


 僕は腹の底に突き上げるものを感じ、二人に駆け寄っていた。


「美桜!」


 神宮寺さんがびくっとして顔を上げる。


「ああ、なんだ…、ヒイラギくんか…」

「あの、美桜は…」

「ああ…、ごめんね」


 神宮寺さんは罰が悪そうに笑った。


「まさか、こんなにお酒に弱いとは思ってなくて…」

「え…」


 薄闇の中、神宮寺さんに支えられて歩く美桜の顔を覗き込む。

 彼女の顔は、真っ赤に染まり、すうすうと吐かれる息にはアルコールの臭気が混じっていた。


「美桜に酒、飲ませたんですか?」


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