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もう未来なんて売らない  作者: バーニー
68/112

その⑪

「私が無理言って、二人分用意してもらった。ヒイラギくんの分も」

「………」

 僕は放り出された謝礼品を紙袋の中にそっと戻した。全部、小説を書くための道具だ。乱暴には扱えない。紙袋を右手に持ち、店に戻る。そして、事務処理をしていた店長に近づくとお礼を言った。

「ありがとうございます…、僕の分も用意してくださって」

「いえいえ! こちらこそ! 今日はありがとうございます」

 金が絡んだ店長は、人間らしい喜び方を見せた。

「いやあ、本当、光栄ですよ! 小説家さんに来てくださるなんて! もう、サインを書いている姿なんて、神々しくて…!」

 うっとりと、数時間前のイベントのことを回想する店長に、僕は聞いた。

「店長さん…、あいつの小説、読んだんですよね?」

「え…」

 あいつ。という言葉に、店長さんは一瞬固まった。

「どうでした? どう…、思いましたか?」

 本来ならば、僕が書くはずだった小説だった。

 店長さんは「はい!」と朗らかな笑みを浮かべた。

「とても素敵な作品でしたよ。特にラストが…、もう、切ないのに幸せというか…、ハッピーエンドではない辺りがもう…、とても良かった!」

「……そうですか」

 僕はこくっと頷いた。

「あいつの次回作に…、期待してください。次も、必ず満足させてみせますから」

 そう言って店を後にしようとすると、店長さんが聞いてきた。

「失礼ですが…、ヒイラギさんでしたっけ? 林道先生とは、どんな関係ですか?」

「あ、ああ…、まあ」

 僕は曖昧に答えた。

「ビジネスパートナーみたいなもんですよ」

「…はあ」

 店長はピンとこない顔のまま頷いた。


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