その④
「そ、そんなの習ってない!」
何故かムキになる。
まあ、本当に国語に興味が無いんだろうなって思いながら、僕はポケットから自分の執筆に使っているUSBを取り出し、彼女のパソコンに差し込んだ。
小説賞の応募作品のプロットを広げて、林道美桜に見せる。
「作り方は人によって違うんだけど…、まあ、大体こんな感じだと思う。鵜呑みにするなよ、所詮、小説賞四次落ちの無能小説家志望のプロットなんだから」
そう言いながら、スクロールしていく。
その事細かに書かれた情報に、林道美桜は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「うへええ、めんどくさ! こんなに書かないとダメなの?」
「そうした方が、質のいい作品に仕上がるんだよ。まあ、帰納法は予定調和みたいで嫌がる人もいるんだけど。それに、林道は『質のいい作品を作るため』ってよりも、神宮寺さんの目をごまかすためにプロットを作るんだから、変に気負わなくていいよ。そうせ、プロットなんて作らなくたって、傑作小説は完成する『運命』なんだからさ」
周りの目をごまかすためにプロットを作るなんて聞いたことが無いぞ?
「林道は、きっと演繹法なんだろうなあ…」
羨ましいよ。
そう嘆いていると、林道美桜が泣きそうな声で「ねえ」と言った。
「演繹法と帰納法って何?」
「………」




