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もう未来なんて売らない  作者: バーニー
42/112

その⑧

 イベントは滞りなく終わった。


 地元が生んだ新進気鋭作家「林道美桜」。


 彼女の凛とした姿が特設ステージに上がった時、集まっていた者たちは小さな歓声を上げ、スマホのレンズを彼女に向けた。


 デビュー作の簡単なあらすじ紹介。販売店舗の紹介。林道美桜先生直々の受賞のお言葉。そして、客たちからの質問タイム。


 この作品を思いついたきっかけを教えてください。


「ホラーの短編集が好きで、よく読んでいたんですよ。それで、怖いけど、怖くない。読後感が爽やかで、人が生きることの手助けになる作品を書こうと思いました」


 次回作はどんな作品が書きたいですか?


「そうですね…、書きたいことは一貫して『人が生きることを手助けする』作品なので…、まあ、似たり寄ったり、でも、新しいものを書きたいですね」


 私、今作の登場人物の○○さんが好きなんですけど、モデルとなった人はいますか?



「ええとねー、これ、言っていいのかな? お隣の茜さんって人ですね。はい、そんな感じの人ですよ」


 僕が予想していた内容と、八割は同じ質問が林道美桜に浴びせられた。彼女は少しぎこちなく、でも、決してそれが「作り話」であることを悟られずに言い切った。なかなかの役者だと思った。


 質問コーナーを乗り切ればコッチのものだった。後はサイン会だけ。著書を販売しつつ、サインを書くだけだ。


 そうやって、時間は過ぎていった。


「ヒイラギくん!」


 トイレ横の自販機で買ったコーヒーを飲んでいると、林道美桜が杖を突きながらこちらに歩いてきた。僕は壁から背中を引きはがし、彼女のもとへと歩み寄る。


「どうだった?」

「助かった」


 林道美桜がぺこっと頭を下げる。


「すごいね。あの紙に書いてあったことのほとんどが出たね。マジで助かったよ。あれが無いと、私、しどろもどろになって赤っ恥をかくところだった」

「ついでに、僕のものだった未来にも泥を塗るところだったんだ」



 僕はあらかじめ買っておいた、彼女の分のミネラルウォーターを渡す。


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