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もう未来なんて売らない  作者: バーニー
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その④

 女はその場で、改めて説明した。


 この世界には「運命」というものがある。


 運命という存在を簡単に説明すれば、それは「神様の筋書」だ。


 「偶然」ではなく「必然」。


 本能寺の変で、明智光秀が織田信長を裏切ったのも、関ヶ原の戦いで徳川家康が勝利したのも…、第二次世界大戦が起こったのも、日本が負けたのも、バブル崩壊が起こったのも、すべて起こるべくして起きた事象…、つまり、「神様の手のひらの上」なのだ。


 まあ、神様が本当にいるかどうかはわからないのですが…、と言って、女は続けた。


 女の仕事は、「未来の売買」。そのまんまの意味だ。他者から未来…、つまり運命を買取り、その未来を別の誰かに売りつける。人生を一冊の「本」として例えるなら、そこから一部のページを切り取って、他人の本の間にねじ込むのだ。


 未来を売ったからと言って、寿命が縮まるわけではないから安心してください。


 そう、女は言った。


「では、どうしますか? 未来、売りますか?」


 一通りの説明を終えた女は、風に靡く銀色の髪を鬱陶しそうに撫でながら聞いてきた。

 僕は少しだけ迷った。そして、怖くなって聞いた。


「僕の、未来は…、どんなことになるの?」

「それは教えられません」


 女は唇に指を押し当てた。


「他者の人生を見ることができるのは、私たち、『未来の売買人』だけ。人間がそれを見ることは『禁忌』なのです」


 禁忌。の意味はわからなかったが、とにかく未来を教えてくれないことはわかった。

 女はくすっと笑った。


「これだけは教えましょう。『未来』には『価値』があります。人がどんな人生を歩んだかによって、それ相応の『価値』が与えられる…。例えば、事業で大成した人間には莫大な価値があり、年中パチンコで時間を浪費するような人間には、大した価値が与えられない…」


 口元がにやっと笑う。


「あなたは、前者ですね。あなたの『未来』の価値は、素晴らしい…」

「…………」


 僕の身体の血が、指先から凍り付くようだった。


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