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もう未来なんて売らない  作者: バーニー
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その②

「ありがとうね…、来てくれたんだ」

「僕が来ないと、まともな生活をしないだろう?」


 僕は枕元のゴミを拾い上げると、ゴミ箱の中にぎゅっと詰めた。ナイロン袋ごと引っ張り出し、口を結ぶ。麦茶は台所に行って捨てた。


 冷蔵庫をあけてみると、一か月前に僕が置いていったミネラルウォーターのボトルがそのままになっていた。まだ開いていない。


 僕は台所から、居間の母さんに言った。


「母さん! 水、飲んでないの?」

「飲んでいるよ」

「でも、ミネラルウォーター減っていないじゃないか」

「やあね…、水道水よ」

「水道はだめって言ったじゃないか。まずいし、お腹を壊すかもしれないんだ。特に母さんは体調が悪いんだから…」


 野菜室を開けると、野菜室を開けると、キャベツが黒くなっていた。それだけじゃない、僕が「野菜も食べなよ」って言って買っておいたもの全てに手が付けられていない。


 台所の横のゴミ箱には、コンビニの弁当やら、コーラのボトル、缶詰などが分別も無しに詰まっていた。二月で助かった。もう少し気温が高かったら、もっと悲惨なことになっていただろう。


 僕は舌打ちをして、すぐさまゴミの分別を始めた。


 布団から出てきた母さんが僕の後ろに立つ。


「ねえ、元気にしていた? 一か月間、寂しかったのよ」

「……うん、まあ、それなりに過ごしたよ」

「そう…、それでなんだけど、ちょっとお金が無くてね…」

「一万円だろ?」

「それがね…電気代が払えていないから…、ご飯代も合わせて…、三万くらいほしいかな?」

「……わかったよ」


 ゴミの分別を終えて、ゴミ袋の口を縛っていると、台所のテーブルの上に錠剤が置いてあることに気が付いた。その隣にあったお薬手帳を確認すると、もらった日から三か月が経過していた。


「母さん、薬、飲んでないの?」

「飲んでいるわよ」


 母さんは間の抜けた声で頷いた。


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