表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう未来なんて売らない  作者: バーニー
2/112

その②

 小学生の時、僕は急病に犯された母親を助けたことがあった。


病名は今となっては覚えていない。って言うか、聞かされていない。でも、今すぐに手術して、高い薬を投与しないと、明日の朝日を拝めるかどうかわからない状況だった。そう、お医者さんが言っていたような気がする。


 父親と離婚して、親には勘当されて、母さんには頼れる人間がいなかった。僕も学校では孤立して、近所の人間に邪険に扱われていたから、もう八方塞がりだった。


 当時はまだ、母親に対して「屑親」という印象を抱いていなかった僕は、どうすればいいかわからず、母親が死ぬことへの恐怖から、ただ泣きじゃくっていた。わんわんと泣いていた。


 そんな時、僕はあの女に出会った。


 錯乱して病院を飛び出し、訳も分からなく走った僕は、気が付くと、僕は神社の裏手にある林道を歩いていた。


 冷えた秋風がざわざわと木々を揺らしている。


 振り返るとそこに、女が立っていて、僕に言うのだ。


「未来を売ってみませんか?」と。


 黒いマント、華奢な身体。銀色の髪の毛に、透き通るような肌。


 まるで絵本の中の魔女をそのまま切り取って、この世界に配置したかのような姿に、僕は全身が粟立つ感覚がした。そして、思わず尋ねた。


「ねえ、誰?」


 僕の質問に、女は「おっと」と言って、口をしなやかな指で上品に押さえた。


「これは失礼…、私は『未来の売買人』です」

「みらいのばいばいにん?」


 頭の中に「?」が数十個浮かんだ。

 女は上品な笑みを浮かべながら続けた。


「お母さんが死にそうなんでしょう?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ