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もう未来なんて売らない  作者: バーニー
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その⑨

 まあ、今はそういうのが売れるんだろうね。と、彼女は自虐気味に笑った。


「売れる奴らからしたら、私とかキミなんて、古臭い作風に捉われた老害だと思われているんだろうよ。『売れた方が正義』…、それ以外は『負け犬の遠吠え』さ」

「……そうですね」


 いや、違うな。僕の場合は、「『未来』を売ってしまったから」だ。

 未来さえ売っていなければ…、あの時、あの女に会っていなければ…。


 こんな話したところで、茜さんには「創作のし過ぎだよ」と言われるだけかもしれなかったので、僕は口を噤んだ。彼女の言う、「運が悪かった」ということにしておくことにした。

 今回は運が悪かった。次こそは上手く行くさ。


 上手くいかないことくらい決定づけられているというのに、僕はそう、都合よく解釈することに成功した。


 茜さんは壁際に寄せてあった机のノートパソコンを見た。


「新作、書くの?」

「思いついたら」

「楽しみにしているよ」

「あまり期待しないでください。傑作の次に来るのは『駄作』って決まっているんですから」

「言えてる」


 実体験があるのか、彼女は肩を竦めて笑った。


 その後は、積極的に楽しい話をすることにした。主に茜さんの仕事場での話。「店に女装したおじさんが来た」とか、「女装したおじさんがメルヘンな絵本を買った」とか、「女装したおじさんが会計の際に、じっと顔を見てきた」とか、「思わず吹き出してしまった」とか。


 「それはヤバいですね」「それで、どうなったんですか?」と、くだらない話に花を咲かせて、酒を呑んでいるうちに、僕は小説のことを頭の片隅に追いやることに成功した。

 缶ビールを飲み干したら、サワーを呑んだ。甘くてフルーティーで丁度良かった。それから、おつまみをぼそぼそと食いつぶし、足りなくなったのでコンビニに買いに行った。

 そうやって、僕の空虚な夜は更けていった。



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