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08.エレって呼んでもらいたいな

 放課後、私とルナリアはタインスイートに来ていた。


 平民向けだと聞いていたので、もっと小さなお店を想像していたんだけど、うちの宝石店の倍以上の大きさと、お菓子の家のような可愛らしい外観に驚いた。

 平民向けでこれってすごい。


 中に入ると、これまた期待を裏切らない可愛さで、木製のクマさんやウサギさんの小さな置物が、可愛いラッピングのされたお菓子と共にお出迎えしてくれた。


 奥には小さな丸テーブルと椅子が置いてあるスペースがあった。どうやら買った物をその場で食べる事ができるみたいだ。

 飲み物を注文して、お菓子と紅茶を楽しむ女の子達がいた。

 お菓子店にカフェが併設されているのかな?



「いらっしゃいませー」


「ロイズさん、お久しぶりです」



 ルナが店員さんに話しかけた。

 可愛い猫耳の付いた黒い帽子と、肉球柄の黒いエプロンを着けていた。お店の雰囲気に合わせた制服なのかな?

 私より少し背の高い、黒髪ショートの中性的な容姿の店員さん。

 女の子?男の子?どっちだろう。



「あ、ルナちゃんいらっしゃい。今日はお友達も一緒なのかな?」


「はい、バレン・タインデイ用にお菓子を買いに来ました」


「そっか、こちらがバレン・タイン用のラッピングになります。中はチョコ、カップケーキ、クッキーが選べるよ」


「ありがとうございます。手作りできるセットもあるって聞いたんですけど」


「あるよー。友達で交換したり、仲の良い人に渡すのなら、材料も型もセットになってて安いしお勧めだよ」


「楽しそうですよね」


「でも、貴族の方に告白するのには向かないかな、安全性の問題で、よほど信頼関係がないと受け取ってもらえないから」


「分かりました、少し考えてみます」


「了解、あと新作あるから、お友達と試食して感想くれると嬉しいな」


「お買い物が終わったら、カフェに寄りますね」


「ありがとう、待ってるよー」



 ルナは、このお店の常連さんなのね。

 店員さんとの楽しそうな会話に、私は口を挟めなかった。



「今の人、女の子?」


「いいえ、男性ですよ。タインスイートの店員さんです」


「猫耳帽子の男性店員?!」


「可愛らしいですよね。彼目当てで来店する方も多いみたいですよ」



 やっぱり、このお店とバレン・タインを企画した人は、転生者に違いない。

 絶対に突き止めて、言いたい事がある。


 あの店員さんのタキシード姿が見たいです!メイド服でもいいよ!絶対似合うし可愛い。



「私は決めました、ラッピングされた物を購入します」



 私が妄想をしている間に、ルナは買う物を決めたみたいだ。

 手作りも楽しそうだけど、貴族令息向けじゃないんだよね?だったら、私も既製品でいいかな。

 値段も確かにお手頃価格で、義理チョコとして配るのにちょうど良さそうだ。

 お値段高めのハートの形のチョコカップケーキを一つ買って、本命用にしようかな。



「私も決めた!チョコレート三十個とカップケーキにする」


「三十個ですか?!」


「義理でね、お世話になった人達に配るの。カップケーキは本命ね」


「たくさんお世話になった方がいるんですね」


「まあねー」



 注文をして、帰る時までに準備してもらう事にした。

 待ち時間は、カフェで紅茶を注文して試食のクッキーをもらった。



「さつまいもの味がして美味しい」


「そうですね、お野菜や果物の甘味を活かして、高価なお砂糖を控える事で、価格を抑えているそうですよ」


「体にも良さそう」


「お、良く分かってるね、美容にもいいんだよ?だから、毎日試食をしてるボクの肌はプルプルだよー」



 クッキーの感想を話していると、猫耳店員ロイズくんが私達のテーブルに来た。



「ロイズさん、このクッキーとっても美味しいです」


「ありがとう、店長に言っとくよ。お友達のお名前は?」


「あ、エレーナと言います」


「エレーナちゃん、良い名前だね。ボクはロイズよろしくね」



 にっこり猫耳ロイズくんに笑顔を向けられて、新たな扉が開きそうになった。

 私は年上好きなはずなのに!



「ロイズくんは、何歳なの?」


「ん?ボクは今年二十歳になりました」


「え?!」


「驚きますよね。だから、このお店の野菜クッキーは、みなさん自分用に買って帰る人が多いんです」



 よくて同い年くらいの見た目で、四つも年上ですか。

 私も追加でクッキー買って帰ります!



「ありがとうございました、また来てねー」



 ロイズくんに見送られ、大量の紙袋を抱えてお店を出た。

 夢の世界から一気に現実に戻る。

 買いすぎたかもしれない。

 でも安かったし美味しかったし可愛かったので大満足です。



「寮に戻ったら、カードにメッセージ書かないとね」


「三十枚書くのは大変そうですね。私はお兄様に差し上げたくて買ったので、書くのは一枚だけです」


「なるほど、私も従兄弟に一つあげようかな、お世話になってるし」



 そんな事を話しながら、寮まで二人で歩いた。

 久しぶりに、友達と遊んで楽しかった!またルナを誘って遊びたい。



「そういえば、私ルナの家名覚えてなくて。改めて自己紹介させてもらうね。私は、アズロニア男爵家長女のエレーナです」


「私は、ガルニシア侯爵家の長女ルナリアと申します。エレーナ様、仲良くして下さいね」


「侯爵家のお嬢様?!タインスイートに行くって言ってたから、私と同じ男爵だと思ってたよ。話し方失礼じゃなかった?これで大丈夫?」


「気にしないで下さい。学生のうちは爵位関係なく仲良くしてもらいたいと思っています」


「ルナありがとう!私の事も、気軽にエレって呼んでね」


「それでは、エレ様と呼ばせていただきますわ」



様は付けるのね。

でも、友達にあだ名で呼んでもらえるのって、更に仲良くなれたみたいで嬉しい。


やっぱり友達には、エレって呼んでもらいたいな。

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