06.そんなに似ているのかな?
「おい、エレーナ?どうした、顔色が悪いぞ」
ダンテ様から逃げて女子寮に向かう途中、イシュトに呼び止められた。
私はイシュトを見てようやく安心して、彼に抱きついた。
「イシュト!ダンテ様ヤバイ奴だった!怖かったーー」
「え、寮長と出かけてたのか?ヤバイって?」
「何か私の事を、エレナって呼んで愛してるって言ってた」
「なっ!?」
「それに、目は緑で髪はもっと薄いピンクになればいいのに、とか何とか」
「それは……エレナ・クロニア男爵令嬢の事か?」
「エレナの事知ってるの?」
「お前に顔が似ている、髪色は国花のピンクローズと同じ色のご令嬢だな。エレーナと同じ学年だけど、彼女は第一クラスで校舎が違うから知らなかったのか」
「そうなんだ、私その子と間違えられてたのかな?」
「いや、寮長は髪と目の色の違いを、ちゃんと理解しているから、分かっててお前に付き合っていたんだろう」
「なんでそんな事」
「エレナ嬢は婚約者がいるらしい。だから、いくら想っていても寮長の想いは叶わない」
「え?婚約者がいるの?自由恋愛できる学園なのに?珍しいね」
「いや、けっこう居るぞ。お前が一時期追いかけてた貴族令息達にも婚約者持ちがいた」
「まさか、クライシス様とかルカリオ様の事?!私の事好きなのかと思ってアプローチしたけど、結局彼女持ちで惚気見せつけられて……。もしかして彼女じゃなくて、婚約者だったの?」
「だな」
「何で教えてくれないのよ!」
「一学年の婚約事情なんて知るか。俺も後で友達から聞いたんだよ」
「むぅー」
「確認しなかったのかよ」
「私に意味深な笑顔を向けて、その気にさせた人達が悪いのよ。それに、一年生で婚約してる人なんて居ないと思ってたし」
「お前なぁ、ちゃんと確認しないと、今に大変な事になるぞ」
「分かった、婚約者の有無は確認する」
そうね、次は間違えないわ!
ダンテ様は怖いけど、彼が好きなのはエレナだから、近づかなければ大丈夫よ。
代わりにされていたのは、面白くないけどね。
それにしても、そんなに似ているのかな?
私は少しエレナに興味が湧いた。