03.諦めるのはまだ早いよね
「大丈夫かぁ?」
「うるさい」
「父さんも言ってただろ、アクセサリーのデザインは、斬新で素晴らしいって」
「んー」
「ただ、商才が無かったな」
「んむぅー」
伯父様とのお話が終わり、私は自室の机に顔を乗せて不満顔をイシュトに晒していた。
今の鏡の中の自分は可愛くない。
アクセサリーのデザインは褒められた。
でも、アクセサリーに宝石を付ける台座の作成にかかるコストの算出が甘かった。
父の商売の事もう何も言えないわぁ。
覚悟はしてたけど、予想よりかなり長期戦になりそうだった。
アクセサリーは、一つ一つ全て職人の手作り。
前世のようにパーツが機械で作られているわけじゃないの。
すごく小さな宝石を落とす事なく、アクセサリーに繋ぎ止める台座。これを何のノウハウもなく一から自分達で考えて手作りって、それは高くなるよね。
伯父様には、『少し考えてみようか』と優しい言葉をかけてもらったけど……。
「宝石を見せるアクセサリーを作る、って案はすごいよな。さすが、アズロニア男爵家の娘だ」
イシュトが慰めてくれる。
少し口は悪いけどいい奴だ。
「まぁ、すぐに実現するとは、思ってなかったけどさぁ」
「そうなんだ?」
「私が結婚して、子供が生まれる頃には出来てるといいな」
「何で?」
「だって、自分の子供の守護石は、私がデザインしたネックレスに付けて、持っていてもらいたいじゃない?」
「そ、じゃあ宝石を付ける台座の作り方考えてやるから、出来たら俺用に何かデザインしてくれ」
「え?別にいいけど……何がいい?」
「指輪かな」
「じゃあ、イシュトが結婚する時、結婚指輪デザインしてあげるよ。台座作ってくれたらね」
この国にも、結婚式の時に指輪の交換はある、もちろん宝石は付いていないシルバーリング。
台座ができれば、シルバーリングに宝石を埋め込む事も可能だろう。
「結婚指輪か、いいね。エレーナ約束だぞ」
「いいわよ!ちゃんと宝石が落ちないように作ってよね」
イシュトの言葉で少し希望が持てた。
諦めるのはまだ早いよね。
私達はまだ子供だもの、これからよ!