18.私も恋していいですか?
「イシュト、何か近くない?」
「何なら俺の膝の上に乗ってくれてもいいんだけど?」
「このままで、お願いします」
あの後、これからの事を話し合う為に、ソファーに移動した。
二人並んで座ってるんだけど、イシュトは私の腰に手を回してピッタリくっついている。今までと全く違う距離感に私は戸惑っていた。
私は前世でも、本当に好きな人には奥手だった事を思い出した。
男友達と平気で距離を詰める事が出来るのは、本当に友達だと思ってるからみたい。
「何で入学式後、このネックレスを私にくれた時に告白してくれなかったの?」
「エレーナは、学園で色んな人と出会うのを楽しみにしていただろ? だから、あの時プロポーズしても受け入れてもらえないと思った」
確かに、それは否定できない。
あの時の私は、出会いを求めていた。
人脈を広げる目的もあったけど、素敵な出会いも期待していた。
「私に素敵な恋人が出来ていたら、どうするつもりだったの?」
「恋人が出来たとしても、エレーナが結婚するまでは諦めないつもりだっけど」
「そ、そう」
そこまで私の事を想ってくれていたのか。
嬉しくて、思わず顔が緩みそうになる。
すると、イシュトが急に遠い目をして話しだした。
「そもそも、他の奴らに牽制するつもりでネックレスを入学までに作って渡したんだけど、全く着けてもらえなかったから、あまり意味がなかったな」
「うっ」
「何度か着けてくれれば、そのネックレスの意味に気付くと思ってたんだけどな」
「くっ」
何も言い返せない。
ネックレスを受け取った時でさえ、出来上がりに感動したけど身につける事はしなかった。
初めて着けたのが売り込みをする時で、イシュトはその場に居なかった。
つまり、受け取ってから今初めてイシュトの前でネックレスを着けているという状況。
何だか申し訳ない。
「すぐ婚約しようと思えば出来るけど、とりあえず恋人って事で、外出する時は、そのネックレスを着けてほしい」
「待って、そんな簡単に私達婚約できちゃうの?」
「元々エレーナが入学する時に、俺と婚約させておこうって話が出てたんだ」
「私聞いてないんだけど?」
「言ってないからな。学園卒業するまでに、エレーナに恋人が出来なかったら婚約させるって話になった」
「何で?」
「二年間は、自由に学園生活を楽しんで欲しいと思ったんだよ」
そうか、私イシュトが学園に入学する時に、『来年が楽しみ!学園で素敵な恋愛したい!』って言ってたもんね。
「それに、親に決められて婚約するのが嫌だった。婚約は、エレーナが俺の事を好きになってからにしたい」
「私、もう結構イシュトの事好きだよ?」
慌てて私も告白した。
婚約も出来るならすぐしてもいいと思う。
この近い距離も嫌じゃなくて、ドキドキしすぎて、どうしたらいいのか分からないだけ。
「嬉しい。けど急がなくても大丈夫だよ。本当は、俺が卒業する時にプロポーズしようと思ってた。でも二人に急かされてな。想いを伝えておいて、卒業するまでに好きになってもらう事にしたんだ」
「二人に急かされたって?」
「サージスとエレナ嬢。ちゃんとお前と話をしろってさ」
「あの二人も仲良しね」
「そうだな」
一年も先延ばしにされなくて良かった。
こんなに、私の事を想ってくれている人に、気付かないで過ごす所だった。
エレナ達に感謝しないとね。
幸せを噛み締めながらニヤけていたら、彼は私の耳元に口を寄せて囁いた。
「だから、覚悟しとけよ」
「え?」
「これから、一年かけて、俺に惚れさせるから」
そう言って、彼は私の顎に手をかけて、甘く優しいキスをした。
◆◇◆◇◆◇◆
私も彼の事が好きだって言ってるのに、彼は一年かけて惚れさせると言っていた。
だから、私も一年かけて、彼の事が大好きだって証明しないといけないみたい。
ーー私も恋していいですか?
読んでいただき、ありがとうございました!
\(^-^)/
とりあえず、こちらは完結します!
イシュトとエレーナが恋人同士になった所でキリ良く終わりにしました。
ダンテ寮長とか意味深に去ってそのままですが、
「私も恋していいですか?」
の方で設定回収できたらいいな。
もう一つの物語で書きたかった事は
だいたい書けました。
エレーナ、幸せになるんだよ。




