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02.ラブコメ的すぎる展開なのだが


 階段の一段目に足をかける。

 ボンヤリと上を見上げた俺の目は滅多に見る事のない物、いや、者に向く。


 ––––––そう、階段の中程で足を滑らせたようで、落ちて来る少女に。


 そのラブコメでこそ、王道な物の現実で起こる事はそうなそうな出来事に俺は目を疑った。


 アドレナリンでも分泌されているのか、時間がゆっくりと進む。


 これは放っていてはダメか。

 と思ったもののそんな迷う必要も無かった。


 なぜなら、その少女はその小さな背中から飛び込むように俺の方に落ちてきたからだ。


 うん、かわすのは流石にダメだろうな。しかたがない、受け止めてやろう。


 ––––––影が俺へ迫る。


 覚悟を決めた瞬間に俺の胸に衝撃が走った。もちろん、物理的な物だ。


 少女を受け止めた俺は踏ん張り切れなくなって後ろへ倒れた。


 幸い、俺は階段の一段目にいたので、後ろに段差はない。頭を階段の段差に打ち付けたら後遺症が残るかもしれなかったから


 少女を抱き抱えたまま、俺は強く背中を打ち付けた。


「––––––ぐへっ ⁉︎ 」


 なるほど。倒立してそのまま背中をマットに叩きつけたヤツの気持ちがわかったかもしれん。


 僅か遅れて胸にも衝撃が来る。


 ちょっと苦しい。この娘の体重がそこまであるわけでは無いだろうが、重力加速度的な要素もあるのだろう。

 痛み、早く引いてくれないかな……。


 ……

 ………

 …………


 痛みが引いてから、俺は早急に状況判断に努める事にした。


 俺の上にしなだれる少女。


 首を動かすと、なぜか不服そうな顔をした楓が仁王立ちをしていた。

 マジでなんでこうなった?


 俺は楓に気付かないふりをして、少女に話しかける。


「とりあえず、怪我はないか?」


 彼女は顔を上げた。


 艶がありながら、先の事もあり少し乱れた黒髪。その長い前髪の隙間から、紅い瞳が覗く。濡れた瞳はどこか魔性的な輝きを灯していた。

 少し開いた口から小さく八重歯が出ている。


 言うならば、吸血鬼みたいな少女だった。


「あ、あの……」


 鈴が鳴るような美しい声が響く。

 その声は少し怯えているようにも聞こえた。


「ん?」


 少しはにかみながら、何かを言おうとする彼女。


「あ、あの……、その……」

「どうした?」


 俺は怯えさせないよう、優しく聞いた。

 どこか(ほう)けた少女。

 その姿があの日の彼女と重なり–––––


「––––––や、やっぱり、なんでもないですぅ!」


 彼女は立ち上がってそのまま階段を駆け上がる。


 ––––––後には唖然とした俺と不服そうな楓が取り残された。


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