かくれんぼ 【月夜譚No.52】
かくれんぼなんて、何年振りだろうか。最後に遊んだ記憶は小学生の頃だ。物陰に隠れてじっと蹲り、友達が捜しにきたのを息を詰めてやり過ごした。どきどきとした胸の高鳴りと心地良い緊張感は、今でも鮮明に思い出せる。
あの頃のように今も楽しめたらいいのだが、流石にこの状況下で楽しめるほど心臓は強くない。廊下の向こうから足音が近づいてきて、彼は呼吸を忍ばせた。懐中電灯の光が目の前を通り過ぎ、物音が完全に聞こえなくなるまで身動きが取れず、もう大丈夫だと確信してから長く息を吐き出した。のっぺりとした廊下の床に手をつくと、ひんやりと冷たかった。
警備員に見つからないように施設内に一晩隠れてみよう――一体誰が言い出したのか、そいつも馬鹿だが、乗った他の連中や自分も同罪だ。酒に酔った勢いもあったのだろう。あの時に戻れるのなら、是非とも戻ってこの計画を阻止したい。こんなことに時間を費やして、馬鹿馬鹿しい。しかし朝まではここから出られないし、一緒にいた連中とも逸れてしまった。
時間はまだまだある。仕方ない、とりあえず逸れた連中と合流しよう。彼は暗い廊下の先を睨みつけた。