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3話・摘発

 まるで犬や猫を見せびらかすように、奴隷の子供を着飾って品評する集まりは定期的に開催された。半年経つ頃には少年達の半数は成長により処分され、入れ替わりで新たな子供が奴隷として連れてこられていた。


 食事の内容と量はかなり制限されている。育ち盛りであるはずの身体に必要な栄養が足りておらず、自分を含めた全員やつれていたが、それすらも「青白い顔が儚げで良い」とされた。


 成長を遅らせ、見た目を維持するために生きるのに最低限の食べ物しか与えられない。倒れそうになるのを必死で堪えながら、主人の機嫌を損なわないよう精一杯努めた。


 でも、もう限界だ。


 ふらつく足で参加したお茶会。半月振りに開催されたその集まりの最中に事件が起こった。



「これは一体どういうことかしら」


「パ、パルテナ様……!」



 突如多数の騎士達がお茶会の会場である部屋になだれ込んできたのだ。率いてきたのは、栗色の長い髪を結い上げた凛々しい顔立ちの女性。コルネリア達よりやや年上だろうか。参加者の女性達は青ざめた表情で部屋の片隅で身体を寄せ合っている。



「良からぬ遊びが領内で流行っていると聞き、密かに調べさせていただきました。……この子供達は貴女がたのお子様ではありませんよね?」


「ど、奴隷の子を保護しただけですわ」



 コルネリアの返答に、パルテナは眉をひそめて溜め息をついた。



「我が国に奴隷制度などありません。この子供達はどこから連れて来ました? 答えられないのではありませんか?」



 奴隷制度がない?


 これまでずっと自分達は奴隷だと思い込んでいた。そう言われ続けたからだ。奴隷ではないのなら、何故こんな風に貴族に飼われているのか。



「……失礼、言い方を間違えましたわ。この子達は罪人の子や孤児ですの。わたくし達が保護しなければ死んでおりましたわ」



 気を取り直し、再び言い返すコルネリア。堂々とした態度だが声が僅かに上擦っている。糾弾されて動揺しているのだ。



「……ものは言い様ですね。調べさせたと言ったでしょう。子供達の出自は全て知っておりますよ。もちろん、貴女がたがどう扱ってきたのかも」



 口調は穏やかだが、パルテナは怒っている。


 自分を含めた少年達は呆然とするしかなかった。この事態に緊張の糸が切れ、その場に座り込む者もいた。それを見て、パルテナはすぐ周りに指示を出した。自力で歩けない子供は騎士によって抱きかかえられた。



「追って沙汰を致します。まずはこの子達を保護しなくては」



 立ち去ろうとするパルテナを、必死の形相をしたコルネリアが呼び止めた。



「お、お待ちください! インテム(ここ)は我がヴェルダード家の領地内ですよ。幾らパルテナ様とはいえ、そのような勝手な真似を──」


「領地内、ですって?」



 冷ややかな声が部屋に響いた。



「この街一帯は確かにヴェルダード家が治めています。ですが、あくまで主家であるウェンデルバルド家の領地を分割して管理を任せているに過ぎません。それに、貴女自身はご当主ではありませんよね」


「でも、」


「お黙りなさい。これ以上喚くようなら私の権限で処罰致します。……わかりましたね?」


「……くっ」



 そう言い残し、パルテナは部屋を出た。


 お茶会に参加した女性達のうち、最近参加し始めた一人がその後ろに付き従った。恐らく、彼女が内偵をして情報を収集した上で今回現場に踏み込んだのだろう。


 馬車に乗せられ、毛布にくるまれる。移動中、ひとりひとりに甘い飲み物が与えられた。飢えた体に染み渡る。この時、初めて人のあたたかさを知った。

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