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そこそこへの挑戦  作者: 幸 弘
6/11

第五話 新学期3日目

 予定を早めて投稿します。投稿間隔については、あらすじをご覧ください。よろしくお願いします。


 さち ひろし


 投稿時に本文の後半が反映されなかったようです。訂正してお詫びいたします。


 さち ひろし 2019/11/17 21:41


 2年D組 新学期3日目


 今日も昼に西岡と弁当を食った。昨日の精神アクセスで知ったが西岡のは自分の手作り弁当だった。毎朝早く起きて家族3人分の弁当を作ってる。タコさんウインナーは西岡の好物であると同時に、一番の自信作でもあったわけだ。


 ゆっくり味わって食べた昨日と違い、タイムアタックの如き西岡の食べっぷり。

(ほんわかしたコイツのイメージに合わないな)

 ごちそう様をした西岡がそわそわと聞いて来る。


「結衣ちゃんお薬は?」

「ああ、ちょっと待て」


 ザワッ


(ん? いま一瞬、周りがザワめいたような……)

 気のせいか?


「(今、薬って言わなかった?)」

「(薬って言ったよね?)」

 ヒソヒソ……


「早く! 早く!」

「(しっ、声がでかい)」

「(あ、ゴメンね)」


 ゴソゴソとカバンから取り出す。


「(こいつだ。中身がバレないように茶封筒に入れておいた)」

 机の下を通して、そっと西岡に手渡す。


「(わあ、ありがとう)」


((な……))

「(中身がバレちゃマズイ薬って……)」

「「「(まさか!!)」」」


 続けてオレは小声でザックリ説明する。

「(一つは直接注入するタイプ。もう一つは飲むタイプだ。どちらも試して自分に合った方を使うといい)」

「(うん……)」


「(直接注入!? ……薬物注射!!)」

(((まさか……本当に!?)))


「(薬は初めてか? 使えばスッキリいい気分になるぞ)」

「(うん、やってみる。ちょっと怖いけど楽しみ)」


「「「(いい気分になる薬!)」」」

「「「(楽しみって、何が!?)」」」

 最初は2人の周辺だけだったザワめきが、今ではクラス全体に広がっていた。


「(買い方も教えてやる。これを見ろ)」

 オレはそう言って、自撮りしておいたスマホの写真を見せる。


「(サングラスにマスク。帽子をかぶって……もしかして結衣ちゃん?)」

「(そうだ。全部100均で揃えた。こうすれば誰だか判らない)」

「(うん)」


(((話しがどんどんヤバイ方向に行ってる気がするんですけど……)))


「(気をつける点だが、向こうはお前の個人情報を聞き出そうとするはずだ。だが、そういった質問には一切答えるな)」

 店側はお徳なカードだとか、会員にならないかとか、いろいろ薦めてくるからな。とにかく身バレしない事を優先する。


「(でも、それで売ってもらえるの?)」

「(問題ない。あいつらも商売だからな)」

「(うん。わかった。ありがとう結衣ちゃん)」


(((うわあああ……、今のはヤクの売人の話しだよね!?)))

「「「(これが本当なら、西岡もめちゃくちゃヤバイやつじゃん!)」」」


「(ちょっと美山、聞いた!?)」

「(あー、あー、聞ーこーえーなーいー)」


 耳を押さえて、ぶんぶん首を振る美山。

 そこへ笠原田が戻ってきた。


 ガラッ


 シーーーン……


 そのまま真っ直ぐ2人のいる場所まで歩いてゆき、立花に声をかける。


「話しがある……」

「……」


 無言で席を立つ立花。


「結衣ちゃん、また後でね」

 ニコニコ

「ああ、」

(なんか西岡を見てると脱力するわ)


 そして2人は教室を出ていった。

 また教室内がザワめき始める。


「ちょっと、どーすんのよ美山!?」

「どーするって……どーもしないわよ」

「あんた委員長でしょ!? なんとかしなきゃ!」

「なんとか……って、できるわけないでしょ! あんたたち人前でウ〇チ漏らせる!?」


 シーーーン


(それ絶対、立花の冗談だと思うけどな~)


「じゃあ、止めるんじゃなくて、様子を見てヤバそうなら先生に報告するとか……」

「く…… そうね、それくらいなら」

「美山ガンバ!」

「お前が死んだらウ〇チは拾ってやる」

「それを言うなら骨でしょ!」

「「「ぎゃはははっ」」」


(こいつら……)


 それでも私は気をとりなおして2人を追うことにした。

(たぶんトイレに行ったと思うけど……)



 校舎2階 トイレ


「用件はなんだ?」

 2人でここまで来たのはいいが、先に入った笠原田が背を向けて黙ったままだ。


「……」


 オレは小さく溜め息をついて出て行くことにする。

 その時、振り返った笠原田がいきなり土下座した。

「兄貴っ、すいやせんでした!」


(え?)


「兄貴の強さを知らなかったアッシは身の程知らずでした。許しておくんなせえ!」


(こいつ昭和臭えと思っていたが江戸っ子? 江戸っ子なのか!?)


「わかった。とにかく立て」

「兄貴、許してもらえるんすか?」

「ああ許す。だからさっさと立て」


「あ、兄貴~」

 グスンと鼻をすする笠原田。


「こんなところを他の生徒に見られる訳にはいかんからな」

「誰も来ないっすよ。このトイレは兄貴専用っす」

「何!?」

「みんな兄貴に恐れをなしたっす」

「恐れを……ちょっと待て、さっきから兄貴ってなんだ!?」

「兄貴は兄貴っす。この学校で最強の兄貴っす」

「お、お前、オレをなんだと思ってる!?」

「あ、ほら、今オレって言った。やっぱり兄貴っす」


「あ……」

 ゴホン


「ところで何故ちょっかいを出してきた。そんなに窓際がいいのか?」

「窓際は口実っす。こっちに来る前にこの学校を仕切れって言われたっす。だから一番強いのを潰すことにしたっす。それで兄貴に返り討ちにされたっす」

「一番強いって……入ったばかりで同じ転入生だろ。いったい何が分かるっていうんだ」

「誰が見ても一目で分かるっす。兄貴はケタ違いっす」


 なんか頭痛くなってきた。

「そもそもお前をそそのかしたのは誰なんだ!?」


「ブラッドマックスのリーダーっす」

「ブラッドマックス? なんか昔の暴走族みたいな名前だな」

「さっすが兄貴! でも今は老人ホームっす」

「老人ホーム?」

「ブラッドマックスのメンバーだけで作った老人ホームが、ブラッドマックスっす。写真見るっすか?」

「写真?」

「これがリーダーっす」


 差し出したスマホには車椅子に座ってリーゼントに決めた、強面(こわもて)のじーさんが写っていた。


「髪が少ないからチョンマゲみたいになってんぞ」

他のジジババも、ひと目でくせ者揃いと分かる。


「ん? この小さい子はお前か?」

「そうっす。小学生の時から可愛がってもらったっす」


 なるほど、こいつの昭和臭(しょうわしゅう)は、この老人ホームの影響か。


「ブラッドマックスに入り浸ってたアッシを、メンバーから引き離そうとウチの親父がここへ飛ばしたっす」


 そうか……、なんとなく話しが見えたな。ブラッドマックス(武羅怒魔苦巣……字はこんな感じか?)のリーダーが転入先を仕切るように言ったのは、こいつに目的を与えて気持ちを切り替えさせる為だろう。


(どうせ、みんなと離れたくないとかグズったんだろうな)


 ……ん?

(なんでパチンコがあるんだ? しかも10台以上はあるぞ)

 別の写真には老人ホームのフロアの一画に、まるで店のように並んだパチンコ台が写っていた。しかも足元にはドル箱まで積まれている。


「なあ、この写真……」

「あ、それっすか、他にもパチスロや麻雀、花札なんかもあるっす。ギャンブルは一通りそろってるっす」


「ぬ、ナナシーにアレジン。たぬ吉くん2! Fラッキーマジックだと!? 他にも!」

 ダイドーは甘い台が多かったから、オレも昔はよく打った。


「さっすが兄貴! 詳しいっすねえ」

「だが賭けなきゃ面白くないだろ」

「賭けるっすよ」

「何!?」

「ホームのコーヒー券やオヤツ券を賭けるっす」

「マジか……」

「マジっす」

 そう言って別の画像を見せる。


「うおっ、ひと島全部ファインプレーだと!?」

「そうっす。勝負の時はみんな同じ台でやるっす! でも釘師マサやんが釘をいじるんで、ちょっとづつ違うっす」

「釘師マサやん?」

「現役時代は釘バットのマサやんと呼ばれてたっす。アッシを一番可愛がってくれたっす」


 やべえ、ちょっとここ行きてえ


「あれ? 兄貴興味もったっすか? いつでも案内しやすよ」


「ん?」

 その時、背後から視線を感じて振り向けば、入り口のドアを少し開けて誰かが中の様子を(うか)がっていた。


「誰っすか! 覗いてんのは!」

 2人で廊下に出てみれば、そこにいたのは学級委員の美山だった。


「委員長っすか。委員長が覗きっすか!? 女が女を覗いて、いいとでも思ってんすか?」

「ひっ」


 女同士なら大して問題には……いや、そういった話しじゃねえな。


「待て、ケンカ腰になるな」

「でも兄貴、こいつぁ」


(兄貴!? 立花って男だったの!?)

 美山混乱


「いいか笠原田」

「栞っす」

「じゃあ栞。お前はホームでどういう扱いを受けた?」

「可愛がってもらったっす」

「それと同じだ。ブラッドマックスに可愛がってもらったお前が、同じ学校の生徒を可愛がらなくてどうする。フレンドリーに接するんだ」


 はっ!!

「そうっすね! やっぱり兄貴はすごいっす!」


(何これ? 立花と笠原田は仲直りしたってこと!? それにフレンドリーって何?)


「委員長、悪気は無かったっす。笑って許してほしいっす」

「え? あ? うん……」

「許してくれるっすか! アザッス! お詫びにアッシを覗かせてあげるっす」

「え? いや、そんな趣味ないから!」

 同性覗いてどーすんのよ!


「そうっすか? 遠慮しなくていいっすよ?」

「いやほんと。勘弁して」

「美山、悪かったな。心配して来てくれたんだろ?」

「え? う、うん」

「さ、教室に戻るぞ」

「了解っすー」


(あれっ? 立花って普通に会話できる? ……でも、まだ分からないわね)




「あっ、美山!」


 教室に戻ると、クラスメイトに心配され……たのではなかった。


「生徒会から会長と副会長が来てて、美山に話しがあるんだって。今は書記の照美が相手をしてる」

「会長と副会長が!? どうして私に?」


「あなたが学級委員の美山さんね?」

「は、はい」

(うわっ本当に生徒会長! 3年の剣崎先輩だ。それに副会長で私と同じ2年の田畑さんも)


 剣崎先輩は身長162cmでスタイル抜群。特徴的な姫カットの似合う、すっごい美人だ。女の私から見ても、とても中3とは思えない魅力がある。

 もう1人は副会長の田畑多美(たばた たみ)さん。身長は150cmくらいで、おかっぱ小太り。実はこの人めちゃくちゃ頭がいい。成績は入学した時から常にトップ。今の生徒会の土台を支えているのは間違いなくこの人。


「あの、剣崎先輩? 何だったでしょうか?」

「このクラスに問題児がいるって聞いたから、その確認ね」


 剣崎先輩の話しを田畑さんが引き継ぐ。

「普通は生活指導の先生が受ける案件。でも訴える生徒の数が多く、生徒会も無視できない」


「多美の言った通りよ。しかもここだけでなく他のクラスからも報告が来てる」


(うわ~、確かに立花のやった事は異常だよね~。同じ学年で知らない人はいないと思うわ)


「それで、どの子? ……待って判ったわ!」

 スタスタと歩いていき、ビシッと1人の生徒を指差す。


「ふふふ……そのふてぶてしい面構え、あなたが例の問題児ね!」


 シーーーン


(((いや、あながち間違いでもないけど、違うんじゃないかな~……)))


「(兄貴、褒められたっす)」

「(いや褒めてないだろ。ふてぶてしいって……男相手なら褒め言葉になるかもしれんが)」


(え? 違う? となり?)

さすがに周囲の生徒が訂正した。


「ふふふ、私を欺くとは、……やるわね!」

 そう言って今度はビシッと立花を指を差す。


「私の目は誤魔化されないわ。ちっちゃくて、可愛いくて、おとなしそう! あなたが例の問題児ね!」

「おい日本語がおかしな事になってるぞ」

 田畑さんの冷静なツッコミに、周囲も無言でコクコクと同意する。


(もしかして、剣崎先輩って……ポンコツ?)


「あれ?」

 指差した剣崎先輩がなぜか固まった。


「ん?」


「あーーーっ、立花結衣!」

「あ、剣崎詩織」

「おしい! 剣崎詩葉よ」

「あ、悪い」

「あなたが問題児?」

「いや、初耳だが……」


(((え? 知り合い?)))


「あの、先輩と立花さんは、お知り合いなんですか?」

「あ~、知り合いというか……なんというか……」

「剣崎には前に地下鉄で……」


 ガバッ! ドタタタッ

 なにかを言いかけた立花の口を押さえて、抱えるように剣崎先輩が廊下に連れ出した。


「「「えっ?」」」

 皆あっけに取られて一瞬なにが起きたのか分からなかった。



 ダンッ!

 剣崎がオレを廊下の壁に押し付けて問いただす。

「今あなた、チカン事件のことを言いかけたでしょう!」


 オレは頷いた。

「剣崎との関係を説明するのに、あの件は外せんだろう」


「ダメよ! チカンのチの字も言ってはダメ! すぐウワサに尾ひれが付いて、ひどい事になるんだから」


 どうやらオレを心配してくれたようだ。


「ところで生徒の1人を失神させたの、あなたなのよね?」

 オレを解放して聞いてくる。


 オレは答えた

「女が相手の場合、肌を傷つけないように無力化するには、手段が限定されるからな」


「へー、ちゃんと考えての行動なんだ。でも少し自重しなさい! あなた陰で首刈りって呼ばれてるのよ」


(首刈りか……言いえて妙だな。だが)

「自重なら相手に言ってくれ。こっちはむしろ被害者だ」

「ふふ……それもそうね。その通りだわ」




 その頃、教室では


「美山、剣崎会長だいじょうぶかな?」

「ちょっと様子を見てくる」

 そう言って教室を出ようとした私を、副会長の田畑さんが手で制して言った。


「戻ってきた」


 ガララッ

「ハーイ! 2年D組のみなさ~ん。元気ですか~」


(((えっ、何? 剣崎先輩の、このハイテンション……)))


「田畑さん、剣崎先輩ってあんな人でしたっけ?」

「あれが()の状態。保科先生もそうだけど、クールビューティーの中身はあんなもの」

「はあ……」

 なんかイメージが……。


「2年D組は問題なし! 帰るわよ多美」


「剣崎」

 オレは剣崎を呼び止めた。

「詩葉でいいわ。結衣」


 !!


(((生徒会長が名前で……)))


「わかった詩葉、心配させたようだ。悪かったな」

「私は自分の仕事をしただけよ」


 そう言って会長と副会長の2人は教室を出て行った。


「(これって、どういうこと?)」

「(立花は生徒会長お墨付きって事になるの?)」

「(ひょっとして生徒会公認?)」

 ヒソヒソ……


 その時、ボソっと誰かがつぶやいた。


 薬物 西岡

 狂犬 笠原田

 そして立花組組長 首刈り立花

 さらにバックは生徒会……。


「誰よ今へんなこと言ったの! 怖いこと言わないでよ」

「ちょ、美山!」

「あ……」

 目の前に立花がいた。


(い、いや、ウ〇チはいや、やめて、誰か助けて……)

 ガクガク……


「はぁ~っ」

 しかし立花は大きく一回ため息をついただけだった。


「美山、昼休みはもう終わりだぞ」


 この立花の何でもない一言で、始業式から連日の騒ぎが一応の収束をみる。

 後に嵐の3日間と語り継がれる、激動の日々がようやく終わりを告げたのだった。




 その夜 夢の中の部屋


「友達ができた!?」

「ああ、1人だけな」

「どんな子?」

「よく分からん」


「え?」


「昼に話しかけられて一緒にメシを食っただけだしな」

「ふ~ん、そうなの……」

「ちょっと待て」

 人間ってイメージで出せるんかな? そう疑問に思いつつもやってみる。


「おっ、できた」


 ちゃぶ台をはさんで結衣の目の前に西岡が立っていた。


「この子が友達?」

「名前は西岡すみれ。結衣よりちょっと背が高いかな?」

「ふ~ん、おとなしそうな子だね?」

「そうだな、話し方もおっとりしてる。少し表情をつけようか。瞬きもしないのは、さすがに不気味だからな」

 そう言って西岡を動かしてみる。


「結衣、ちょっと笑いかけてみてくれ」

「うん」

 ニコッ


 すると西岡も一瞬目を閉じて笑い返した。

 ニコッ


「あっ」

「よし、うまくいったな。実際の西岡もこんな感じで笑う」

「ふ~ん」

 しげしげと見つめる結衣。


「セーラー服かわいいね」

「そうだな。なんでもこの制服を着たいがために、聖徳を受ける生徒もいるって話しだ」

「そうなんだ……」

「それにしても女は色々と大変だな。夏はとにかくスカートの中が熱い!」

「でしょ? そうだよね!」

「ああ、男からすると一見スカートのほうが涼しく思えるが、実際は違う」

「うん、うん、だよね~」

 腕を組み、何度もうなずく結衣。少しおっさんぽい。


「それに西岡もそうだが、便秘のやつも結構いるみたいだな」

「この子便秘なんだ……」

「ああそうだ。本人が恥ずかしいって言うんで、薬はオレが変装して代わりに買ってやった」

「えっ? 変装したの?」

「ああ見るか? いったん西岡消すぞ」

 そして入れ替わりに変装時の結衣を出す。淡いピンクのワンピースに、帽子とマスク、そしてサングラスと怪しさ満点だ。


「ぶーーーっ」

 それを見て、たまらず結衣が噴き出した。


「アハ、アハハハッ」

「そんなにおかしいか?」

「ぎ、銀行強盗……ぷくくく」

「銀行強盗ねえ……こんな感じか?」


 イメージで出した結衣の腰を落として半身に構えさせ、それにオレがセリフをつける。

「金を出せ!」

 差し出した右手にはフォークを握らせた。


 !!


「~~~っっ」

 それを見た結衣が腹を抱えて声もなく転げまわる。


 5分後

「フッ、フッ、フォークで銀行強盗……あははは」


 まだ笑ってる。箸が転んでも笑う年頃とはよく言ったもんだ。さっきから収まりかけては笑い出すを繰り返している。


(こりゃ、今夜は2人で学習作業はできそうにないな……ん?)

 あっ、やべっ、体が目覚めようとしている。


「結衣! 右手を噛んでくれ!」

 前回は覚えていたが今回もそうとは限らない。


「おい! 結衣!」

「ひーっ あはははっ」

 だめだ。転げまわって笑いが止まらない。


 結衣ーーーっ




 ハッ!

 オレは汗びっしょりで、目を覚ました。

「ハア、ハア、お、覚えている……」


 右手を見ても当然歯形はない。


(覚えているが……これはマズイ。2回ともオレのミスだ。次からは忘れず噛んでもらって、確実に覚えている状態にしないとダメだ)


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