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チャツネとは、何度も取引をしている。
義理堅く、裏切らない、この世界では良心的な男と言えた。
「ステージに寄って行かないように、ロープで括っておけよ。『曲撃ちチャツネ』さん」
笑うマクスウェルに、チャツネは酒のつまみのピーナッツを一粒、軽く投げつけた。
「そこまでボケてないよ! 天下のガツビィ・ブロウウィンだよ!」
「そいつは失礼」
ひとしきり笑うと、マクスウェルは途端に真面目な顔になった。
「『死神団』のランスを調べたぜ」
「うん、何か分かった?」
チャツネの言葉にマクスウェルは、両手の指をカタカタと動かして見せた。
「チャツネ、『惑星爆弾』事件、知ってるか?」
「『惑星爆弾』?」
「そう、元は惑星グスターヴの軍隊が秘密裏に開発してたらしい。爆弾1個で、惑星を丸ごと破壊しちまうって代物だ」
「わあ。めちゃくちゃ物騒じゃん」
「ああ。驚きなのは、この後だぜ。その爆弾を、3個もまとめて奪われたんだよ」
「ええ!? ヤバいじゃん!」
チャツネは目を回した。
「そうだ、これはヤバい。ヤバすぎだ。爆弾を奪ったのは、ハイブリッドソルジャーの…」
「ちょっと待って」
チャツネがマクスウェルを止めた。
「何だよ、いいところなのに!」
「ハイブリッドソルジャーって何?」
「お前、ホントに何も知らねえな」
マクスウェルは呆れた。
「ある研究施設で造られた最強遺伝子を持つ兵士のことだ。ある日、突然、反乱を起こして、施設中の人間を殺して逃げだしたらしい」
「へー」
「『へー』って! そのハイブリッドソルジャーの1人、ヴァルゴって女が『惑星爆弾』を奪った首謀者だったんだよ」