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「ある星の貧しい村で生まれ育った。両親を早くに事故で亡くした私には、村人全員が親代わりだった。彼らは自分たちも貧しいのに、日々の食べ物を私に分けてくれたのだ。嫌な顔ひとつせず、面倒を見てくれた。彼らの愛が私の血肉となった。私に商才があると気づいた彼らは村のための金を使って、学校に通わせてくれた。私の才能はメキメキと伸び、あっという間に金を稼げるようになった。私は彼らに金を返そうとしたが、彼らは頑として受け取らなかった。『お前は私たちの子供なのだから、返す必要はない』と。これは私が大きな富を築いても変わらなかった。彼らの村を、まるごと買える額の100億倍を提示しても、首を縦に振らなかった。私はそんな彼らが、誇らしかった」
とつとつと語ったルートレーグは、ここでようやく飲み物を、ひと口飲んだ。
「1か月前、彼らは皆殺しにされ、村は焼かれた」
ルートレーグの垂れた両眼の中に、ユラユラと揺れる黒い炎をチャツネは見た。
「村の地下に、希少な鉱石があるかもしれないという理由…『鉱石がある』ではなく、『あるかもしれない』…ここは重要だ」
ルートレーグは、「ここは重要だ」という部分を、はっきりゆっくりと発音した。
「『あるかもしれない』という理由だけで、奴らは私の故郷を灰にしたのだ」