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男が右手のひらを出す。
チャツネは、もう一度、レーザーを撃った。
やはり無効化される。
「それが答えなんだ? しょーがないね」
男が右手のグローブをチャツネに向けた。
手のひらから青いビームが発射される。
「!?」
チャツネの右脚が、一瞬で凍りついた。
まったく動かせない。
男の装着したグローブには、冷凍銃と同じ機能が備わっているとチャツネは理解した。
「あーあ、もう逃げられないね」
男がニヤニヤと笑った。
「オレ、仲間からは『アイス』って呼ばれてるんだ。何でも凍らせるから」
アイスが、もう一発、冷凍ビームを撃った。
今度はチャツネの左脚が凍る。
「こうやって、少しずつ凍らせるの面白いよね。何も出来ない奴をちょっとずつ、ちょっとずつ。ヒヒヒ、助けて欲しい?」
アイスの細い両眼が、興奮で見開く。
「ねえねえ、助けて欲しい?」
チャツネがレーザーを撃つ。
三度、無効化された。
「ギャハハ! 無駄って分かってても撃っちゃうよね! 面白い、面白い!」
アイスが、はしゃぐ。
「早く鍵を出しなよ!」
言ってすぐに、アイスが右手を横に振った。
「いやいや、出さなくていい! このまま凍らせるから! 凍らせて、仔猫ちゃんごと連れて帰るから!」
フリーザーの効果は長くても数分しか続かない。
リミットを越えた氷は自然と砕け散り、凍らされた箇所はしばらくすれば、何の問題もなく動かせるようにはなる。
効果が切れる度に新たに凍らせればアイスの言う通り、彼らのアジトまでチャツネを運ぶことも可能だろう。
だが、アイスがチャツネを凍らせたがっている理由は、明らかに、そのためではない。




