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「そろそろ、デカい仕事をしないと…先立つものが無くなっちゃう」
タブレットを指でスクロールする。
(依頼、依頼っと…)
依頼が入っていないか確認する。
条件に合うものは見当たらなかった。
「ねえ、じいちゃん。『背に腹は変えられない』って言う古い諺もあるじゃん。そろそろ、『悪党だけを殺す』っていうブロウウィン家のルールを変えてみない?」
口をだらしなく開けて、空中に定まらない視線を走らせていたガツビィの表情が突然、引き締まった。
眼の焦点が、みるみるうちに合ってくる。
「チャツネ!!」
さっきとは、比べ物にならない大声。
チャツネはあまりにビックリして、タブレットを落とした。
ガツビィはテーブルに両手をつき、チャツネをにらみつける。
そこにはまぎれもなく、「宇宙一の殺し屋、早撃ちガツビィ」が居た。
「ブロウウィン家は、ずっと大昔のご先祖様の頃から、殺しを生業としてきた。しかし、ただの殺し屋ではない。そこには、ひとつのルールがあった。『悪党のみを殺す』。このルールだけは絶対に破ってはならん!! このルールを破ることは、今までのブロウウィン家の歴史を汚し、その努力を水泡に帰す、すなわち、ご先祖様そのものを殺すに等しい行為なんじゃ!! 絶対にイカンぞ、チャツネ!!」
食事を催促していた人物と、同一人物とは思えない凄み。
ギラギラと光る両眼は、まるで猛獣のそれだ。
「わ、分かったよ、じいちゃん! こわい、こわい!」
怯えたチャツネが、両手を合わせて許しを乞う。
「絶対にダメじゃぞ」
もう一度、念を押すとガツビィは、テーブルから手を離し、ソファーに深く腰かけた。