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チャツネが叫んだ。
いかんせん、両車のスピードが速すぎた。
スピードを殺しきれない状態で2台はコントロールを失い、猛スピンした。
道路脇のフェンスをぶち破り、廃工場の敷地内へと侵入していく。
いまだにおとろえない勢いに2台のエアカーは横転し、逆さまになった。
さらに一回転の後、再び天井を下にして、ようやく止まった。
しばらくして、チャツネとガツビィがエアカーから這い出てきた。
もう1台の男は出てこない。
「じいちゃん、怪我は?」
チャツネが、ガツビィに訊いた。
ガツビィがゲホゲホと咳き込む。
チャツネは慌てて、ガツビィの身体を確かめたが、見たところ、どこも異常は無かった。
「良かった」
チャツネが胸を撫で下ろす。
2人のそばに1台のエアカーが接近し、急停止した。
警察署からチャツネたちを追ってきた2台のエアカーの、もう1台だ。
エアカーから1人の男が降りた。
中肉中背の、眼が細いスキンヘッドの男だ。
頭皮にデカデカと、ドクロのイレズミを彫っている。
(死神団のメンバーか?)
チャツネは思った。
「見つけたよ、カワイイ仔猫ちゃーん」
男が言った。
妙な機械音の声だった。
どうやら故障した人口声帯を、そのまま使っているようだ。
「鍵を返しなよ。さもないと、ひどい目にあわせちゃうよ」
(鍵! 奴らの狙いは鍵か)




