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宇宙空間に浮かぶ小型の宇宙船。
その船内にある広めの部屋で、1人の男がソファーに座っていた。
老人だった。
小さな身体、背中は丸まっている。
顔にはビッシリとシワが刻まれていた。
この男、かつては「宇宙一の殺し屋、早撃ちガツビィ」と恐れられていたのだが、現在は…。
「チャツネ!!めしはまだか!?」
ほとんど歯が抜け落ちた口を開けて、ガツビィが言った。
まぶたは半分閉じかけているが、その下の両眼は真剣だった。
「チャツネ!! めしはまだか!?」
もう一度、怒鳴り、ガツビィは眼の前のテーブルを拳で叩いた。
テーブルの反対側のソファーで寝転がっていた人物が、上半身を起こす。
ガツビィ・ブロウウィンの孫娘、チャツネ・ブロウウィン、16歳。
ヘアカラーリングで深い青色に染められたセミロングの美しい髪。
クリッとした両眼と、こじんまりした鼻、ぽちゃっとした唇、そして少しのそばかす。
美人ではないが、見る者を一目で魅了する、かわいらしい愛嬌があった。
先ほどまでシャワーを浴びていたため、バスタオルを身体に巻きつけている。
むき出しになった、溌剌とした肌のうなじに、専用外部機器をプラグイン出来る、小さなソケットが見えた。
ソケットはジェル状のナノマシンで覆われており、故障を誘発しうる物の接触を遮断する。