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嫌われ鬼娘と彼女に恋した─僕と己─  作者: ラーテル 弓倉


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牢の中3 不正不便

(まれ)、に人間(ひと)の肉は鬼同士では(もてな)しとして出されることがある。(京の親父等の様に人間にまで振る舞う様なことは滅多にないが) 何度か口する機会があったが自ら進んで人間の肉は食べる気は起きなかった。

可哀想とか倫理観の問題では無く、単に(おれ)の好みでは無かったのだ。


その時は墨夫は人間の肉を食べる家だと思っていたが、墨夫が知らなかったのは今朝の言動の限りでは間違いないだろう。(ろく)に貴羅が撃たれたのがバレて慌ただしくなった頃、墨夫は嘔吐した。



「筆子!!お前はあれが人間(ひと)のだって知ってたのか!!」


涙目で墨夫は睨むように筆子を見た。

「うん。この(からだ)になってからは鎮夫お兄ちゃんが持って来るまでは食べて来なかったけど、食べればそれが人間(ひと)なのかどうかくらいは、ずっと食べていたから分かるよ。」

墨夫からは嫌悪と絶望が溢れ出した。



筆子によると地震の日、祢呼と別れた後、家の入ってすぐのところに、鎮夫(しずお)がいたらしい。


「筆子ちゃんおかえりなさい。」


お姉さまの持つ禍々しい雰囲気に筆子は足が竦んで中に入れなかったのを、墨夫は傷のせいだと思ってたらしい。

鎮夫が筆子に話しかけるなんてめずらしい。なんて思うよりも筆子の傷をどうにかしないと奥にある包帯やら薬やらを探しに行ったらしい。



「ひさしぶりね。まさかキツネになってるなんて思わなかったわ。でも、またあなたが妹になってくれて嬉しいわ。」



筆子が返事をする前に墨夫が戻ってきたので返事をせずに済んだそうだ。


その後、今までの兄、鎮夫として筆子達に接していたので白昼夢でも見ていたのかと思ったらしい。

次の日、筆子の顔は本の少しだが鎮夫の顔にあったニキビや傷等が薄れているのに気づいた。丁度、昼間に鎮夫と筆子しか家にいない時間があって二人きりになって困っていた筆子を余所(よそ)に、鎮夫は新聞を読んでいた。


「今まで読めなかった字も、この体の持ち主のおかげですらすら読めるわ。やっぱり誰に入るかは大事ね。」

「…そうだね。」

途中から嫌な笑みを浮かべだした。読み終えた新聞を畳むと玄関の方へ向かった。

「おでかけるすの?」

「ええ。お(うち)の人には大学が心配だからって言っておいてね。何日か帰って帰ってこれないと思うわ。」

「うん、わかった。」

「お土産に美味しい物でも持って帰るから楽しみにしててね。」

「ほんと?楽しみに待ってるね。」

自分は年の離れた妹の立場なのだ。あえて小さい子として振る舞うことで身を守ることにした。




後日、帰ってきた鎮夫の顔には吹き出物や傷のたぐいが全く無かったと言う。それどころか触りたくなるようなキレイな肌でスミオの面影は残しつつ女狐が好んでなる造形になっていた。


出かけた理由は新聞に記載されていた震災の時のデマを利用するためで、大学近くで結成された自警団に入り、その主頭に一言、二言、耳打ちをして動かした。眼の前で人が殺される様を喜々として得意げに話していたと言う。

「本当に人を動かすのって簡単ね。お土産はお母さんに渡してるから楽しみにしててね。」


夕飯で出された肉を口にすると食べ慣れた人間(ヒト)の物だった。

「鎮夫が震災の時にお手伝いしてお礼にもらったんですって。」

肉が食べられることに墨夫は大喜びで口に運んでいた。母親はともかく、表情を見る限り、父親は何の肉が気づいていたかもしれない。

おかわりもあると言われたが最初に自分に出され分以上は筆子は食べれなかった。



「調理されてるのは美味しくなかった?」

二人きりの時に話しかけて来た。

「美味しかったよ。でも身体(からだ)が小さいからたくさん食べれない。」

筆子は機嫌を損ねるのが怖かったので従順な態度を取っていた。

「せっかく死んだのを全部川に捨てられたのば計算外だったわ。おかげで少ししか手にはいらなかったわ。」

「そうなんだ。」

「今度は一緒に直に狩りに行きましょうか?」

「!」

「今なら震災後のゴタゴタで少々いなくなってもわからないでしょう?」

「…。」

相手は筆子の反応が悪いのに気づいたようでため息をついた。

「まさか妹が二人とも平凡な環境に(ほだ)されるとは思わなかったわね。」

「二人って、あの()がどうしてるか知ってるの?」

女狐は過去に共に過ごした妹分の話をバカにしながら話してくれたらしい。

妹は、最期に人間として生き、自身の娘のために死んだと聞かされた。

筆子は妹分の()は貴羅だと言った。


艶さんが中国語が話せたことや女狐とは違ったが、似たような禍々しいものを持っていたことを考えるとそうなのだろう。



「筆子ちゃんまで私のこと嫌いなら仕方ないわね。」

筆子が今までの妹と変わってしまったと悟ると、貴羅を傷つけることとは別の条件も出してきた。それらが終われば縁も切るし、今の体を使っている間は今まで通りの鎮夫と筆子としての関わりに戻すと約束してくれたらしい。



それは屋敷内の殺生石を全て回収することだった。


どちらか一つで良いと言われたので、まずは時間がかかるが安全な方から進めることにした。

筆子は条件達成のために石を集めに屋敷に通いだした。分かるものから見たら鬼の土地が、故意に殺生石を全国から集めて置いていたのは明確だった。とりあえず、周りから怪しまれないようにスカートのポケットに入る分だけの運搬にし、勝手に中で勝手に遊んでる女の子に見せるために地面に絵を書いたり庭の花を積んだりして帰ったりしていたらしい。

もらった石や砂を女狐に渡すと触れた端から体に吸収された。女狐曰く、力も戻っていくそうだ。





そして、今年になってから筆子は貴羅と出会った。

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