牢の中2 換骨奪胎
筆子は女狐から完全に縁を切りたかったらしい。
鎮夫となったお姉さまに会うまでは、今回、筆子は女狐から逃げ切れたと思っていたそうだ。どうやって逃げようかと悩んでいたら、貴羅を傷付けることを条件に縁を切ることを提案をされた。
筆子は地震のとき、落ちてきた瓦で腕をすっぱり切って驚く程血が出て、子供の体を使ってたからなのか色々と考え方や仕草が幼くなってしまい、自分から出た血を見て大泣きしてしまったらしい。
近くにいた祢呼は少年が貴羅の元へ行くのを止めたかったが、すぐ近くにいた怪我をした小さな女子をそのままにしておくことが出来なかった。
家まで送り届けて家の扉を開けようか、声を出そうか迷っていたところに墨夫が帰ってきてそのまま引き渡したのでこの時に扉の中を祢呼は見ていない。
その後、すぐに屋敷を訪れた祢呼からあの女狐の嫌な空気感を感じ取った。今まで塀の外から知っていたが、あんなものは纏っては無かった。
だから陸から少年の体を託されたときに、真っ先に己は祢呼と接触を測ったのだ。
警戒されている以上、あれこれ聞くわけにもいかず、どうしようかと考えるまもなく、地震の後の大火事から祢呼の家族を遠ざけないといけなく、そうしているうちに嫌な感じは消えてしまい、卯の花と会う頃にはすったりただの猫娘だった。
こうなったら祢呼に震災の日に貴羅と別れてから、少年が死んで戻るまでの間に何があったかを聞くしか無い。
とは言え祢呼の家が分からず困っていると学校が再開した。教室に入るやいなや嫌な気配がして、それは墨夫からだった。
最初は彼が女狐本人だと思って警戒していたが、それにしては嫌な感じが弱い。更に、朝と比べて帰る頃ではそれが薄れているのだ。それが毎日起こる。きっと墨夫の周りに女狐がいるで間違えないだろう。
さぐりを入れようにも、元々墨夫が少年と中が良かったわけでは無いので下手な接触の仕方は出来ないし、相手に気付かれて手を打たれたら終わりだ。
年が明けると俺が陸に頼んでいた大量の資料が貴羅を通して祢呼にわたされた。
それを墨夫が祢呼の家まで運んでいた様で、祢呼と貴羅が揉め出したら墨夫が割って入りだした。
「バカ」
ただでさえ、女狐の関係者かもしれないと疑惑の目を向けていたところに貴羅を侮辱したのだ。貴羅に向けたその言葉に、己は気づいたら墨夫を投げ飛ばしていた。
貴羅を思ってしたことだったが、それに対して貴羅は墨夫に謝る様に言った。
「貴羅が己を嫌っている」ことを改めて示された気がした。貴羅との修復は不可能だろう。
だがその方が良い。墨夫のことは祢呼に探りを入れてもらうわけにもいかないし、本当に墨夫の周りに女狐がいるのならこのままふたりとは距離を取ったほうが良い。
彼に近づくのは少年らしいやり方が良いだろう。貴羅と仲良くなるまでの記憶を辿った。そのほとんどが少年の方から彼女に友好的に話しかけていたので昼食の時間を狙って墨夫に話しかけることにした。その時間にした一番の理由は彼の弁当が目的だった。
西洋人は日常的に肉を食べる。日本に来てまともに食べられて無いからなのか、狼になるからなのかは分からない。そんな中で毎日毎日、彼の弁当に入っている肉が欲しくて欲しくてたまらなかったのだ。
昨日の今日で謝ると言う口実で、墨夫と一緒に食事を取ることが出来た。
それとなく家族のことを聞くと妹がいると言う。狐…女…これは怪しいと感じざるをえない。
そして肉を貰うことも出来た。これらは墨夫の兄が持って帰るそうだ。あの時は喜々として口に運んだが何の肉か分かってからは特別な感情は消えて、他と食べ物と同じ、体のために食べないといけな食べ物の一つとなった。
それも墨夫の兄が撃たれたことでとぎれた。




