牢の中1 昼想夜夢
弾丸の事で陸を遠ざけているうちに、那由他を家に帰らせた。
貴羅は無事だと言われたが、夜に部屋を追い出されてから見ていない。不安しかない。せっかく貴羅と話せたのにやるせない。
祢呼の家で、陸にバレたと那由他が飛んできたので、墨夫の妹が貴羅を撃ったことは言わないとみんなで取り決めた。
陸の取り乱す気持ちも分かるが、女狐が誰だがわかった以上、失敗は許されない。
己と僕が帰り難そうに家に戻るとやはり祖母がいた。
「あのまま帰ってこなくて良かったのに。」
この女には片腕がない。その昔、陸が屋敷に入ったそれを落としたのだ。
何の因果か那由他の義母になるとはな。それよりもあの義母相手によく我慢できるなと思うことが多々ある。そのうち相手を殺してしまうのではないかと心配になるくらいだ。
あんな言葉を浴びせられて、己と僕は涙目になってしまい申し訳無さそうにして自分の部屋へと向かった。
部屋にしている座敷牢に布団が敷かれていて、そこに頭を包帯で巻かれた貴羅が寝かされていた。
「貴羅…。」
筆子が言ってたな。
「本能的に自分よりも強い種族は怖いんだぁ。狐の体を使っているだけの私でも怖いんだよ。だから貴方にお姉さまから直々に何かして来るってことは無いと思うよ。」
確かに隠り世でないのなら1番安全だろう。
少年に目玉を返してもこのまま己のままだったとしても、いずれは貴羅は己を受け入れてくれるだろうか…。
指の先で軽く貴羅の髪を撫でながら、この娘とたくさん話したい、ずっとそばにいたい、また、それ以上のことを願って仕方なかった。
気が付くと貴羅の目が本当に薄く開いていて、左右違う色の黒目が少し動いていた。口も呼吸に合わせて少し動いているようだ。
最初は薄めで己が嫌で寝てるふりをしながら様子を見ているのかと思っていたけど、呼吸の乱れや緊張感が無いので意識は無いのだろう。
「貴羅…」
今度は貴羅の右の頬に甲側の指を添えて親指で目の下を撫でた。
暫く撫でてると喉が息を呑む様に跳ねた気がした。
弱々しく開いてる目が己の方を見ていた。
口が動いていた。
「…アドルフ。」
空気の混じった声で貴羅が少年の名前を呼んだ。
「意識は戻りました?」
那由他が後ろに立っていたのに気付いていなかった。
「もう少し意識がはっきりしたら飲ませてあげて下さい。」
那由他は牢の格子の間から水飲を渡し己の顔をキッと軽く睨むように見た。それで己が少したじろいでしまうと満足したのか去って行った。




