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嫌われ鬼娘と彼女に恋した─僕と己─  作者: ラーテル 弓倉


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陸の仕事3 後悔

その後、女は月にニ、三度訪問していたが、急に来なくなった。


気づいたら待ち遠しくなっていて。中々来ないと思っていたら一月立っていてニヶ月経った時は焦った。


なぜだ?

俺が飽きられた?…いや、嫌われたか。

…それなら仕方ない…。と思えど割り切れず、どうしても彼女の心意が知りたかったが、当時の俺は名前と昔の事しか知らなかった。



「つや」


彼女は自分の名前をそう言った。

勝手に「津耶」の字を当てた。ほぼ体だけの関係だった分、「艶」の字を当てたくなかったのだが実際のところは分からない。

何処に住んでいるのか、(うじ)が何なのか、そもそも「つや」と言う名前も嘘なのかもしれない。


嘘だとしても、なぜ俺はもっと今の彼女の話をしなかったのだろう。聞いてたら今とは違う結果になれたかもしれないと、未だに後悔している。



この頃には卯ノ花が開業医だったので客にこういう女が来たら教えてくれと頼んだ。


もしかしたら働いてたり客として来るのでは?と近くの飯屋やミルクホールに時間を変えたりしながら何度も行き、それでも会えなかったので片っ端から娼家にも行って探した。どういう相手が良いか聞かれてる度に津耶の特徴を伝えていたが、通された相手は全て違ったのでいつも相手の顔だけ見て金を払って帰った。そのせいで相手によっては何度か殴られたり引っ掻かかれたりした。その度、卯ノ花の病院に行ったがそれらしき者は来てないと言われた。


途中、彼女は体は弱くは無いだろうから病院には行かないだろうと気付いた。他の方法で探さなくてはならない。




ひどい顔をしていたのだろう。

彼女が最後に来て四ヶ月経つ頃、お得意先の公爵家の主人から何かあったのかと心配された。


余裕が無かったのか俺は、通い妻が来なくなったと正直に言うと涙を流した。

一度涙が出ると、貯めていた緊張が切れたのかワンワン泣き出し、ほぼ体だけの関係の「つや」と名乗る女性が急に来なくなったこと。名前以外何も手がかりがなく、その「つや」も、本当か名前か分からず探せないことを正直に話した。




見かねた(呆れたの方が正しいかもしれない)主人から誰か良い娘を紹介してやると言われたが、その女以外には考えられないと断った。

この屋敷に次に来たときに「百聞は一見に如かず。聞いて周るのに役に立つだろうから、似顔絵を描いてもらえ」と絵描きを呼んでくれていた。



出来上がるとさっそく卯ノ花の所に持っていった。

「この前来た人じゃないの。」

お腹を擦りながら奈子さんが言った。

「そうだっけ?」

卯ノ花はぽかんとしていた。

奈子さん曰くニ月(ふたつき)ほど前で俺が前回と前々回ここに来た間だった。

「あぁ、そう言えば…」


「なんで忘れてんだよ!」

(ろく)さんの話す特徴で個人を特定できるわけがないだろうよ。」



○黒髪で耳が隠れる髪型

↑数ヶ月前のことだし女なんてコロコロ髪型がかわる。当てにならない。

◯真っ黒じゃないけどそう思わせる色の目

巨万(ごまん)といる。当てにならない。

禍々(まがまが)しさと上品さを持ち合わせてる。

↑人の印象なんて個々の偏見でどうとでも感じる。当てにならない。

○洋服を着たところは見たところがない。

↑自分だって奈子が来てるのを見たことない。今の日本でも洋服を着ない人はいる。当てにならない。

○最後に会ったときに左の人指指を深爪したと言っていた。

↑ずっと深爪状態の人なんていない。当てにならない。



…と、いう具合に俺が今まで出した特徴に対して全てに「当てにならない。」と改めてつっぱねられた。


それはそれで、どこに住んでいるか、何故、病院に来たのかを聞いたら卯ノ花が口を開く前に「患者さんのことを他人にベラベラ話すのは医者として信用を失いますから」と奈子さんの方から突っぱねられた。


「次にこの方が来ることがあれば、(ろく)さんと会うつもりがあるか私からお聞きしてみます。もし、相手が『会いたくない』のならお取次ぎしません。貴方の意思ではなく、彼女の意思を尊重します。それで良いならお引き受けします。それで宜しいですね?」



「…はい。」

奈子さんの提案にこれ以外の返事はなかった。

「もっとしっかりと返事なさい!」

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