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嫌われ鬼娘と彼女に恋した─僕と己─  作者: ラーテル弓倉


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鬼と鬼娘9 筆子説話

(わたし)はお兄ちゃんの何十倍も、何百倍も長い時間存在していたんだよ。」

「筆子…」

「あとお姉様と私達は血が繋がってないわ。狐の体を借りているけど元の私は(キジ)。まぁお姉さまは元から狐だけどね。」

「…キジって鳥の?」

祢呼が尋ねる。

「そうだよ。」


女狐と筆子、その妹分は大陸で暮らしていて、ある日、その土地の女神から、三人が呼び出された。皇帝の死期を早くする命受け、まず女狐が皇帝の元に行く女の体を乗っ取り、その後、様子を見て『妹』として転がり込んだんだと。


「命令を受けて皇帝を落として落として、誰の目からも、早く死ぬべき人物にして差し上げたのに、やりすぎだとして私たち三人の首が切られるのを赦したんだよ、ひどいわ。」


命令を建前に故意に悪い方に歪曲し、やりたい放題に暴虐の限りをしつくしていたら雇い主から見捨てられて当然だ。


そうやって殺されて魂だけの存在になった可哀想な妹達に女狐は人の体を乗っ取る方法を伝授した。相手は生きてる時か死んで()ぐのみ乗っ取れるが、一度入った体は死ぬまでは出られないので対象(あいて)はよく吟味してから決めろとの忠告付きで。


筆子は女狐と同じ様に時の権力者を探してその近くにいられる相手を選び、妹分は天涯孤独な者を選び自由に軍場で自由に死肉を漁っていたらしい。



筆子は中国に残り。女狐は天竺や蒙古等、近くの国をを転々としていたらしい。

そう言えば妹はどこに行ったんだろう?…それすら忘れた頃に女狐が東夷に一緒に来ないかと誘われて、共に貿易船に紛れ込んで日本に拠点を移した。

上陸後、女狐は『分霊(ぶんれい)』と言うものを試したいと、九本の尾分けて、それぞれに自身の(たましい)を分けて乗せた。それらを時代の主要人物に取り付けたり、その身近な者に取り付きで戦を焚き付けてたと言う。


分霊した尾は取り憑かれた者が死ぬと女狐の元へ戻っていたそうだ。



ある時、女狐が取り憑いていた女(玉藻の前)の時に退治された。その死体は大石になり、近づくものの命を蝕み続けたが、南北朝時代にそれは小さな石として全国に散らばった。今では「殺生石」や「玉藻の石」などと呼ばれ、踏んだり持ち帰った者に小さな不幸をばらまいている。





その後、筆子は戦の都度、夜に城を抜け出した女狐と夜の合戦場で合流して人を喰う生活をして、ある日、そこで死肉を漁るという同じ目的の妹分と再開し、時折合う様になったらしい。



そんな中、丁度3人とも肉体のない時期が重なったので女狐の提案で、賤ヶ岳(しずがたけ)の戦いで城から逃げ出した浅井の3人姉妹(むすめ)を、長女から女狐、筆子、妹分の順で乗っ取ったそうだ。

「その時の私の名前が初。お姉さまが茶々で妹が(ごう)

貴方が探してるのはお姉様だよ。」


その後、初と江は結婚で女狐の元を去り、日本は全国統一のため戦は無くなってしまったので女狐は秀吉を焚き付け、朝鮮へ出兵させた。

滋養強壮の薬になると虎狩りをさせてたのも女狐の耳打ちだったらしい。

「自分よりも、遥かに強い獣が死体になって自分の手元に運ばれてくるのは、楽しかったって言ってたわ。」



秀吉の死後、退屈だった女狐は異教徒に目を付け、人々に弾圧をさせるのを見て喜んでいたらしい。

どうやらただ人間が食べれたら良いって妹と違って女狐は、人々が苦しむ様を見るのが目的な様だ。


そういう見世物に対して女狐と共に楽しんでいたのが、その頃から筆子は『嫌悪感』の様なものを抱くようになり(ただ飽きただけの可能性もあるが)、女狐から離れることにしたのだ。


「どう逃げても何らかの形で私の近くに来るんだよ。本当に怖いなぁ。」



新しい体を決める際、筆子に決めたのは石見家の構成が両親と男、男、女の3人兄妹からなる5人で、女狐が男と母親の役割を絶対選ばない。そして逃げまわってる妹が狐になるなんて考えもないだろう。それらの理由で目をつけた女の子が丁度流行り病にかかっていたので持ちこたえたら別で探す。死んだらこの娘になると決めたそうだ。


「私は死んだ体をもらっただけ。お姉ちゃんのお父さんはヤブ医者なんかじゃないよ、それに死ぬのだって病気だけが原因とは限らないでしょ。」


この頃には墨夫の顔色がだいぶ悪くなっていて、時々「ウッ」と何かこみ上げてくるけど出せないような動作があった。そのうち吐くだろう。


「お母さんやお兄ちゃんがとても大切にしてくれて嬉しかったのは本当だよ。」

筆子が満面の笑みで墨夫を見る。


父親と墨夫よりも上の兄は筆子がいてもいなくてもどうでも良いみたいで、そもそもその兄の方は筆子の名前すら知らなかったようだ。


「あと、今のお姉様がどうしているか知ってるし、なんなら協力しても良いよ。」

正直、今までの話も幼い口調で周りを煽ってるようにしか見えなかった。

「ふざけてるのか?」

「…そうだね、大切な人を殺そうとした相手を信用できないよね。」

「ちょっとまて、筆子、まさかそのお姉様って…」

「そう。鎮夫お兄ちゃんだよ。」

「えぇーっ!!!」

あまりの祢呼の声の大きさにみんなが吃驚した。


「なんでお姉ちゃんが驚くの?」

苦笑いの筆子が祢呼に問う。

「あ、いや、ちょっと…」

「会ったことがあるのか?」

「昨日初めてお会いして…。すごいイケメンでした。」

同族でも無いのになぜお前は頬を赤らめる。


「顔が整ったのはお姉様の影響だと思うよ。誰に入ってもそこだけは譲らずに来た人だからね。」

すっかり顔色の悪くなった墨夫が口を開いた。

「いつからだ?兄ちゃんが別のキツネになったんだよ。」

「地震の日。私が家に帰ったらすでにお姉様になってたよ。」

子供にとってはあまり聞きたくない話ばかりだっただろうから墨夫と祢呼だけ他の部屋に行ってもらおうか…この流れとは言え墨夫が許すだろうか…悩んでいると玄関が騒がしくなった。


「ねぇ!然さんいる?」

「え、和枝さん?」

那由他が飛び込んできた。

「どうした?那由他。」

「京に贈ったトンビが帰って来ました。(ろく)に知られました!」

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