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嫌われ鬼娘と彼女に恋した─僕と己─  作者: ラーテル弓倉


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鬼と鬼娘8 日出月入

起きたときは常に人間だったので満月が沈むのと、日が出るのとは、どちらが先なのかを、少年も己も知らない。

今日は眠らないつもりだったが、いつのまにか眠ってしまっていた。意識が戻った時は空が白んでたあて、体は人の形であった。


あの後、己達は卯ノ花から祢呼の家へと通された。奈子さんが狐たちの家に電話を入れてくれたので皆で泊まった。一階の客間に布団を一組敷かれ、それに墨夫が寝ている。己はその足元で丸くなって寝た。



上の祢呼の部屋では祢呼と筆子が寝ている。ここ変な真似をしてみろ。即座に殺してやる。



この家の者は今、己以外寝ている様だ。今のうちにと服を着ていたら墨夫が起きた。


「アドルフ、お前、なんで筆子を…」

「なんでって先にスミオの妹がキラを撃ったんじゃないか。」


言い返せない墨夫は別の質問を投げて来た。

「お前、狼だったのか?普通、狼は化けないだろ。」

「元々は人間だったよ。独逸(ドイツ)で満月の夜に狼になる呪いを受けてるんだ。」


祢呼や墨夫と違い、獣が化けられる様になったのとは違う。(少年)は人間だ。


「へー、そう。でもアンタはアドルフじゃないよな?」

「なぜそう思う?」

「なんでアドルフの体を使っているかは知らないけど、アドルフは自分自身が強いことを知らないし、穏やかだった。アンタになってからは荒れた気しか感じない。何せ、ネコやキラの態度が違う。最近は落ち着いたけど、キラはアンタへの殺気が酷かった。」

「部外者からでもわかるもんなんだな。」

「部外者も何も、お前からオレに話しかけて来出したんだろ。それくらいなら我慢できたけど、妹に手を出した。理由(わけ)によってはただじゃおかねぇからな。」

「お前がそれを言うか?」

「兄が妹を守らないといけないのは当たり前だろ!」

「弁当に人肉入れてる奴が何を言う。」


墨夫が止まった。


「じんにくって人の…?」

「お前は知らずに食べていたのか?」

正直呆れてしまった。それが口調に出てしまったので墨夫を更に苛立たせた。

「はあ?知ってたらあんなモノ食べないだろ。ってかそれが判るってことはアンタは食ったことかあるってことで良いんだな?」

「そうだよ。」

「本当にアンタは何だよ。」

「己もお前の妹に同じことを思っているさ。」


階段を降りる音がした。祢呼が戸をあけた。

「おはよう。」

己は祢呼を押しのけて後ろにいる筆子の前に出ようとした。

「然!!」

「アドルフ!!」

それを墨夫と祢呼の二人から止められた。

「きちんと説明してもらおうか。」

攻撃をすることは辞めたが、殺気は抑えられなかっただろう。それは周りに充分伝わっているはずだ。

「筆子が怖がるだろう!やめろよ!!」

「その名前よりも玉藻の前って読んだ方がしっくり来るんじゃないか?」

「オレ達は白狐だ!九尾じゃない!一緒にすんなっ!!」

女狐は反応しなかったので更に続けた。

「なら(よど)と呼んだ方がしっくりくるか?」

この質問に少しだけ筆子の片方の口角が刹那に痙攣したように動いた。それには墨夫も気づいた様で困惑したのが顔に出だした。


「そうだと言ったら(わたし)を殺す気?残念だけど、どちらも違う。」

いつもの子供らしい口調ではないので墨夫が目を見開いた。

(わたし)(はつ)だった。」

「ふ、筆子?」

「そんなに怖い顔をしなくても、貴女も私と同じ事をしてるでしょう。」

混乱する墨夫を無視して女狐が続ける。

「その坊やの体、使い勝手は良くて?」

女狐がニコリと笑う。

「アナタが言ってるのはお姉様ね。」

「女狐に妹がいたことは初耳だ。それに貴羅を傷つけた後だと信じようがない。」

「そうでしょうね。妾達(わたしたち)三人は血は繋がってないし、そもそも私は狐じゃないの。」

「筆子、何を言って…」

「君の妹はもう何年も前に死んでるわよ。」

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