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嫌われ鬼娘と彼女に恋した─僕と己─  作者: ラーテル弓倉


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狐の兄妹3

しずおさんがくれたのは肉だった。


人に近い形に化けるようになり、人と同じ食事は出来る化け猫とは言え、犬科と違ってもともと完全肉食の猫科にとっては嬉しい物だ。

家に帰り肉をお母さんに渡した。

部屋に戻ると机の上に置いておいたキラが年末年始に欧州に行った時のお土産だとくれたお人形と目が合った。

前に髪の整え方を教えた時のお礼だとも言われた。

アドルフとキラ、何もなきゃ良いけど…。そう心配してるとスミオが(ウチ)を訪ねて来た。




なんでももうすぐ日が暮れようかと言うのに筆子ちゃんが帰ってこないそうだ。


「いつもはもっと早く帰るんだ。最近、お前に懐いてだろ?どこが心当たりがないか?」

「無くはないけど…」


キラの家だと伝えると「ありえない」と返された。

鬼が怖いとキラの家を避けての登下校していた妹だ。信じられないのが普通よね。


だが事実、敷地の裏手に入ってあったことがあったのを説明して私もふでこちゃんが優先だと思ったので一緒に捜すことにした。。

地震の後にアドルフだけを先にいかせた時と同じ様に後悔したくないのだ。


すっかり日が暮れてしまっている。

突然『パァアーン』と乾いた音がした。

「…鬼屋敷の方からだよな?」

「うん、たぶん。」


郵便配達員が変な死に方をして所持してるはずの拳銃がなかったとかで新聞に載ってたって周りが言ってたのを思い出した。

「まさか拳銃じゃないよな?」

「アタシも同じこと思った。」


その瞬間(とき)、キラの家の方から怖くて恐ろしい気配が押し寄せて来た。

杉下(すぎもと)だな。」

「アドルフが?」

「お前もこわいんだろ?オレはいつも杉下をあんな風に感じるんだよ。いつもはこんなに強くはないけどな。」


お父さんの患者には人や化け物だけでなく、神獣や御前様と言われている類いも来ていたので強いものが近くにいたことには慣れている。他の子よりも恐怖心がないと思うのだが、さすがのアタシでもこれは異常な事だと分かった。


道の真ん中で大きな獣が誰かを引きずり回しているのが見えた。引きづられてる方はふでこちゃんで近くにキラも倒れていた。



「わぁああああああ!!」


足がすくむとかこわいと思う前にスミオが大声をあげて獣に体当たりをした。


獣が咥えていたふでこちゃんを放した。




「妹から離れろ!!」


スミオが獣とすみこちゃんの間に割って入ったので私はすかさずふでこちゃんのところへと走った。


「ふでこちゃん!」


噛まれたのは服の衿首だけだったようで、引きずられた擦り傷以外には外傷は無いようだ。それよりも私はふでこちゃんの持っていたものの方が気になった。


「このデカさ、バケモンかよ。」

スミオが怖がってるのが解る。けど、この二人をどうにかしないと。ふでこちゃんはともかく、キラは自力で動ける気がしない。だって頭から血を流しているのだ。



人よりも狐に近い顔、体になって墨夫が己に威嚇をしている。



「あーっ!どっか行け!!食いもんじゃねぇぞっ!!」


妹のためにスミオが頑張ってるんだ。私も何かしないと…それにしてもこの獣は隙がないと言うか、私達を逃してはくれないだろう。どうしたらよいか考えていると「ネコ、こっちに…」と、キラが私に手を伸ばした。


「何があったの。」

「今から言う通りに狼に叫んで。」



「この娘こは違うって!キラが言ってるんだからやめたげて!」


私の言葉に獣の勢いが少し収まった気がした。けれど攻撃が収まる感じではない。どうしたら良い?と考えているとキラはふでこちゃんから拳銃をもらい、それを銃口を自身の頭に向けた。


「この娘をこれ以上傷つけたら引き金を引く。」


キラのこの言葉に獣の動きが完全に止まった。

その隙を付いてスミオが獣に飛び付いた。数秒もみ合った後、相手はキラの家の方に逃げていった。


スミオはいつもより狐に近い容姿のまま腰を抜かした。


「…あのデカイのアドルフだよな?片目だし…」


スミオの読み通り、さっきの獣はアドルフであり、然なのだろう。私だけでなく、スミオとふでこちゃんも巻き込んだのだ。



「キラ、きちんと説明してくれる?」

ことがことなのでスミオ兄妹の前でもきちんと応えて欲しかったけれど返事がない。

「…キラ?キラ!」

揺さぶってもみたがキラは意識がなかった。

その横で無言でふでこちゃんが泣いている。


どうしよう、今のスミオにキラを運ばせるのは酷だし、誰かを呼ぶにもこの状態の三人を置いて行って大丈夫だろうか?


「大丈夫?」

振り替えると女の人がいた。

目は細めで少しキリッとしていて。綺麗な鼻に、赤い紅を引いてるが、おそらくは子持ちでそれなりの年なんだろうけど、この(ひと)の持つ雰囲気はその手のことをどうでも良くさせていた。


「貴羅ちゃんは私が運びましょう。」

そう口を開くと女の人は(ふところ)から懐紙を2枚出して1枚だけを右の掌に置いた。すると勝手に紙が折れて鶴の形になり、羽ばたきながら町の方へ飛んでいく。


「狐のご兄弟、この鶴について行ってお迎えする先生に道案内をお願いしますね。」

「あ、はい。」

スミオとふでこちゃんは言われた通りに鶴を追いかけて言った。


もう一枚の懐紙は左の掌の上でトンビの形になった。

羽を広げたトンビを放ると風の抵抗を受けてゆっくりと進みながら落ちていく折り方だ。

お母親さんに幼い頃に作ってもらって、時々弟をあやすのにも作っている。


トンビの方は羽撃きながら手から離れると空気の抵抗を受けながら四、五秒かけて落ちて仕舞う手前で透明になって消えてしまった。

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