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嫌われ鬼娘と彼女に恋した─僕と己─  作者: ラーテル弓倉


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狐の兄妹2

あの日、キラを助けるためにアドルフは敷地の中に入った。

もちろん、そんなアドルフをキラは本当は殺したくなかった。…けれど、長くあの場にいたアドルフはもう助からない体になってしまい、本人から懇願されたから殺したそうだ。


『殺したー殺された』の関係は一生消えない。


アドルフにキラと自分との間に何か欲しい気持ちがあったにせよ、あの震災で生きたくても死んでいった人たちのことを考えると正直モヤモヤする。死ぬって分かっていても、どんなに苦しくても最後の最後まで生きようとするのが生き物じゃないのかしら?

源平のこともあって、その辺の部分ではアドルフを許せそうにない。



学校から帰るとお裾分けをしに石見家に向かうことにした。

震災後すぐにからお父さんが天幕を張って病院を開いてた時の患者さんが「お子様にどうぞ…」と昨日、お礼にいただいたのだ!


私と弟の二人では十分すぎる量をもらったので今朝、学校で然とキラに一箱ずつあげた。

スミオに関しては筆子ちゃんにも渡したかったので、家まで(うかが)うことにした。


震災の時に筆子ちゃんを家まで送り届けたので場所は覚えてる。このあたりは火事を免れたので不幸中の幸いと言えるだろう。


当時のことを思い出してるとあっと言う間に石見家に付いた。



戸を叩くべきか、声をかけるべきか、悩んでいると

我家(うち)になにか様ですか?」と声をかけられ、振り替えると頭に包帯を巻いた高身長の男性が立っていた。

尻尾と耳が出ていて鼻のカタチでもそれが狐だとわかる。色白の肌に切れ長目、けれど瞳は猫と同じく縦に延びていて妖艶さを帯びている。



「ス、スミオ君がいるかと思って…」

自然とすましてしまう私がいる。同族でなくても、意識せずにはいられない。この人はそのくらいのイケメンなのだ。

彼はガラッと戸を開けた。

墨夫(スミオ)いるだろ?来客だ。」


「はい。」

っと短くはいっきりした返事をしてスミオが出てきた。

「失礼。」

入れ替わりに彼が中へ入った。

「お兄さんお帰りなさい。退院おめでとうございます。」

少し嬉しそうなふでこちゃんの声が聞こえた。


「お兄さん?良かったね、退院できて。」

「うん。」

「ちょっと年が離れてるかんじね。何て名前なの?」

「しずお。」

「しずおの『お』はスミオと同じ『(おっと)』って漢字よね?しずは(しず)かにするの字?」

(しず)める。」

「そうなんだ!大学生?」

「兄貴のことを聞くために家に来たのかよ。」


なぜだかお兄さんのことを聞かずにはいられなかった。そのお陰でスミオはふてくされている。


さすがにまずいと思って急いでキャラメルをもらった経緯を説明して渡した。


「ありがとう。」

「一個はふでこちゃんのだからね!」

「なんでだよ。」

「下の子には優しくしなさいよ。」

「筆子はオレなんかよりも兄貴がいたら良いんだよ。」


「オレ()()()」とは自分を下に見なさんな。と思ったが、ちょっとやそっとの言葉でその劣等感は無くならないんだろう。あんなに美しい兄を持ったら仕方ない。


「キラにはあげたのかよ?」

「朝あげたよ。家に残した荷物を整理しに行くって言ってたから今頃は鬼屋敷じゃないかな。早めに帰れるか分からないって言ってたけどね。今日はお父さんは帰ってこないって言ってたから、あまり遅いと女の子一人だったらと思うと心配なのよねぇ…」

「女の子ねぇ…」

スミオは鬼なら大丈夫だろ?っと言いたげだった。

とは言え、まだまだ世の中物騒だ。前に昼に話していた川から出た遺体は郵便配達員で、拳銃がなかったので近隣住民は注意する様に…と警官らが言ってまわっていた。


「その替わり、今日はアドルフと一緒みたいよ。」

「マジで?あいつら最近仲よかったっけ?」

「スミオもそう思うよね?」

「学校再開前とは明らかに違うよな。」


アドルフの影響とはいえ、然はキラのことが好きで間違いないだろう。

キラの方は、場合によっては将来的には然がアドルフに成り替わることに言及するのはやめようとは言ってた。

とは言え、ここ最近のアドルフの体の成長に大人の人と言うか、異性として意識しだしたのかもしれない。


もしアドルフとして生き返ることが出来たら…

…いや、叶わないことは考えるまい。



「行ってきます。」


ふでこちゃんがお家から出てきた。

ホント、相変わらず可愛い…かわいすぎる。

スミオに渡したキャラメルの箱を一つ奪い取りふでこちゃんに渡した。

「お姉ちゃんありがとう。」

ふでこちゃんはお礼を言うと私が来た道の方へ行ってしまった。


「三人そろってだとあんまり似てないよね。」


「昔はそっくりだって言われてたんだけどな。」

「そうなの?」

「うん。筆子は死にかけてからかな。兄貴は大学生になってから殆ど家にいなかったから気づいたら変わってたって感じ。」


「狐は美形になりやすいって言うからスミオもそのころには感じが変わるかもね。」

「キレイなのには越したことは無いけど、兄貴みたいに男にまで好かれたく無い。」

「聞こえてるぞ。」

しずおさんが扉を開けて出てきた。

私はスミオの持ってるキャラメルの箱を一個奪い取ってお渡しした。

「ありがとう。ちょっとまってて。」

しずおさんは包み紙を私にくれた。

「今は手に入りにくいでしょう。家族の方と食べなさい。」

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