鬼娘3 あっぱっぱー
アタシの家は学校から遠い方で、橋を渡って住宅地を通り、商店街の手前あたりでアドルフと合流したり、しなかったりで…その後、学校の近くの貴羅の家の前を通って登校するんだけど、今朝はアドルフと一緒だった。アドルフはキラの家を通り過ぎるとソワソワしだした。
「昨日のクシ、使ってくれたかなぁ?」
「わからないわよ。」
昨日、キラがアタシに髪の結い方を聞いたことは黙っておこう。物心ついた頃からキラと遊んだりしてるけど、正直、未だにあの娘の行動って読めないのよね。下手に期待させるのもなんか悪いし、だからといってキラが悪いわけじゃない。
「おはよう。」
そうこうしていると後ろからキラが、声をかけてきた。
「おはよ…」
返事をしながらアドルフが振り替えると髪を後ろにひとつの三つ編みで束ねてワンピースを着たキラが立っていた。(ちなみに足は昨日までと同じ下駄のままである。)
「洋服持ってたんだ!かわいい♪」
「前にお兄ちゃんからもらってたのを引っ張り出した。朝に見せたら今度これに似合う靴を持って来てくれるって。」
アドルフはうれしいと言うよりも見蕩れた表情でキラを見ていた。彼女の洋装を見るのはアタシも初めてである。
「日直だから先に行くから。」
「りょうかーい、またあとでね。」
しゃべれなくなってるアドルフに代わってアタシが応えてあげた。
「フフ、あげた甲斐があったじゃない!」
キラが小さくなったのを確認してからアドルフに声をかけた。
「まぁすぐに夏休み入っちゃうけどねー♪」
「そうだね。」
「似合ってたわねー、ワンピース。昨日あのあと私に髪の結い方を教えてって言ってきたのよ。容姿のことは周りから色々言われてたけど」
私も嬉しかったのか、昨日のことをアドルフに話さずにはいられなかったし、アドルフも食いつくように聞いていた。
「キラのこと好きなの?」
「!!!」
なんとなく聞いてみたつもりだったけどアドルフはひどく動揺してしまった。
「誰にも言わないわよ。」
「もうやめてよ。」
「ごめんごめん、でも使ってもらえて良かったね。」
「う、うん…。」
なんだか心配そうにアドルフがアタシを見ている。
「言わないわよ。」
アドルフは安心したような表情をした。
「けど、見てれば分かるわよ。」
安心した分、かなり動揺してしまっている。
うん、カワイイ子だ。