鬼と鬼娘2 僕が決めること
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「はぁはぁはぁ…」
建物が所々壊れていたが倒れてはいない。それに対していくらか安堵した。
これなら大丈夫かもしれないと自分に言い聞かせた。
キラの気配を家の中から感じた。けれど彼女がどのような状態かわからなかったので不安が沸いてきた。
安堵と不安が等しいくらいになる頃にキラが怪我をしているのか彼女のものと思われる血の匂いがして来た。
「キラぁっ!」
敷地の中に入ろうかの思ったが、一旦冷静に成ろうと努め、足を止めた。
けれど臭ってくる血の量や、先から同じ場所から動いていない様に思われることを考えると入ることにためらいはなくなった。
敷地内に入っても前の狸の様に粋なり首を折られる様なことはなかった。
家の中に入ると右手にすぐ階段があった。階段をあがってすぐの部屋にキラはいた。
「キラ。」
「…アドルフなの?」
彼女は家具の下敷きになっていた。上半身に家具が乗っかっていて顔は見えないけれど、爪先を天井に向けた状態の両足が少しだけ出ていた。
家具は扉がガラス式の本棚だったようで割れたガラスと本、ちょっとしたガラクタなんかがが散乱していて家具の隙間から血が見えていた。
「早く出ていって、でないと死ぬ。」
「僕が出ていくよりも君を助ける方が先だ。」
「昨日あれだけ言われてて中に入るなんて。」
「いてもたってもいられないかったんだよ。」
「私は大丈夫よ。鬼だからこの程度の傷では死なないわ。」
「嘘つかないで良いよ。」
「もうすぐお父さんが帰るから。放っといて。」
「そうだとしても僕はキラを放っておけない。」
「私たちが殺さなくてもここに居続けたらみんな死ぬ。手遅れになる前に早く出ていって。」
「僕の命をどうするかは僕が決める。」
忠告では僕が立ち去らないと分かると、キラは僕を罵倒し始めた。人種や親のことまで言われたが、それは僕を遠ざけたいからだと分かっているので僕は聞かないようにした。本心でないと分かっていてもキラにそう言われるのは心が痛む。
とりあえず周りの壊れた家具や転がっていた椅子なんかを使って隙間を作った。
今の状況だと足を引っ張ってキラを引きずり出すのが一番だろう。
「引きずり出しても私の首から上を絶対に見ないで。」
キラが言い終わるよりも先に引きずり出してしまったので彼女のこのお願いを聞けなかった。
キラの左目は閉じていたが血が吹き出した後のようで目蓋こそ閉じていたがその目蓋もひどく傷ついていた。左目はもう使えないかもしれないと直感的に思った。
「どうしたの?」
「燭台が刺さっただけよ。」
その言葉に僕は経緯を聞かずにケガそのものの心配だけをすれば良かったと後悔した。
「とにかく出て。私も出るから。」
建物の崩壊の心配とキラがとにかく僕を外に出したがるので二人で家の中から出ることにした。少しホッとしたんだろう。力が抜けてる気がする。少し咳が出た。家は所々のヒビだったり、家具が倒れたり壊れたりで意外と埃が出ていたんだろう。
「本当はいつ地震が起きるかわかってたんだよね?それなのにどうして家の中に入ったの?」
質問に聞こえてないかの様にキラは答えなかった。
「櫛?」
そう聞かれるとは少しだけ眉をひそめた。
それなら僕が彼女を怪我させた様なものだ。キラに非はない、彼女に悪いことをした。
「怪我は大丈夫?早く医者に診せないと…」
「必要ない。今は私よりも優先させないといけない人が沢山いる。痛いけど鬼だからこの程度で死ぬことはない。」
「そう。君が無事なら良いよ。」
キラの返事に安堵したのも束の間、咳が止まらなくなって苦しくなって膝をつき、何かが込み上げてきたかと思うと思いっきり血を吐いた。
驚きと戸惑いの後に不安が沸きだした。
僕の体に何が起こった?
考える前に冷静さを取り戻さないと…これ以上、人の家で血を吐いて死ぬわけにはいかない。
血は嫌いだ。よく怒ったりで興奮状態にある時に血を嗅ぎすぎるとよく記憶が飛んで、正気に戻るとだいたい誰かを傷つけていた。その時の僕は人間の形はとっているが少し歯と爪が鋭くなる。今回もすでに歯の形が変わってきてるのが口の中の違和感で分かる。
頼むからさっきの様にキラが僕を悪い意味で刺激してくれるな。 …とにかくキラから離れないと。
そう思いなんとか屋敷から飛び出した。走ってみたけど足がもつれてノロノロとか動かない。屋敷の扉から門のちょうど真ん中くらいのところで膝をついた。
また血を吐いた。今は僕は自身の血の臭いでキラが僕をどう思っているかなんて嗅げないのだ。
キラはあきれてるだろうか。それとも汚いと嫌悪感を出しているだろうか。
「ゲホゲホっ、」
咳が落ち着いたら膝をついた状態からごろんと仰向けに体制を変えた。もう体が動こうとしたがらない。
ふと見るとキラが扉のところで立っていた。
あぁ…これは死ねるんだな。キラの困った様な、諦めた様な、初めて見る表情を見て死を悟った。
なら僕が死ぬ前に…彼女が許すのなら…一つだけ僕の願いを叶えて欲しい。




