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嫌われ鬼娘と彼女に恋した─僕と己─  作者: ラーテル弓倉
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年明け4 ふろしき

登木(のぼりぎ) 源平(げんぺい)

家が近所だったのと母親同士が仲良かったこともあり、幼い頃は良く遊んでいた。

男と女と言うこともあり、尋常小学校に上がる頃にはお互い同性の友達と遊ぶようになって疎遠にはなってきたが、お互いの家のことは良く知っていた。お母さんの耳のことも。


二人はせっかく震災やその火災を免れたのに殺されたと知ったときは心が冷えて、全身の毛が逆立つ様に感じた。




「鬼って生きたままあの世に行ったり来たり出来るんだってさ。ズルいよなぁ。」

「そうだね。」

前に然から聞いた隠り世のことだろう。

「お母さんも一緒だって。俺たちが無事だと知ったら良かったって言ってたらしいよ。」

「そう…。」


源平たちが死んだのは地震や火事のせいじゃない。デマのせいだ。

朝鮮人が武器を持って暴動をおかしたり、飲み水に毒を入れたり、火をつけたりと事実無根なことばかりだ。なぜ朝鮮人だったのかは分からないが、それによって朝鮮人はみんな殺してしまえと自警団が躍起になって多くの人が殺され、私も然やお母さん、弟と逃げる際に殺されてる人を見かけた。


朝鮮人の他にも方言の強い地域の人や聾唖者(ろうあしゃ)、別の外国人なども被害に遭い、その中に源平母子も入ってる。


今思えばアドルフのお父さんも『外国人が…』って一纏めにされることを懸念して、必死で息子を探してたんだろう。


煽るようなことが新聞に載っていたは大きいだろう。そのせいでよりデマが信じられることになり、多くの人が亡くなったった。


実際、スミオのお兄さんは自警団に入っていた様まし、この話題はが続くのはきっと嫌だろう。お互い無言になった重い空気の中、分かれ道にさしかかると簡単な挨拶をしてスミオと別れた。


源平のことをスミオではなく、直接キラから聞きたかったが仲直りする自身がない。


家に帰りつき、ブーツを脱いでるうちにキラが風呂敷を抱えてやって来た。


玄関(ここ)に置くのと、奥に置くのとどっちが都合がよい?」

「えっと…」

昨日もらった大量の本が見当たらないけど、お父さんはどこに置いたんだろうか?


キラの質問に困っていると奥からお母さんが出て来た。

「物によって場所がことなるからそこで大丈夫よ。重いのにありがとう。」

「いえ、では風呂敷から出しておきますね。」

「ありがとう。せっかくだからあがって行きなさいな。ねえ、祢呼。」


思わぬお母さんの提案にいつものくせで私は「はい」と返してしまった。

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