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嫌われ鬼娘と彼女に恋した─僕と己─  作者: ラーテル弓倉
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年明け2 ついかぶん

スミオが大量の本を家まで運んでくれた次の朝も

いつも通りスミオと一緒の登校になった。


「それで、あの本は何だったんだ?」

あんなに沢山の本を持ってくれたのだ。スミオは少しふて腐れ気味に質問をした。

「…外国の医学書とかよ。私たちは仲たがいしてるけど、お互いのお父さん同士は関係ないからね。」

「ならキラの父親(オヤジ)がネコの家に(ちょく)()きゃあ良かったのに。」

それもそうだが、過ぎたことは仕方ない。

今日は然と帰って、しっかりと説明してもらおう。場合によっては、とっちめてやろうと思いながら自分の席についた。


その後すぐに教室の扉からキラが入ってきた。

しかも昨日と同じくらいの風呂敷を持ってだ。


いや、まさか。こっち見てるし…ってか、こっちに来てる。

案の定、私に近づいて、

「追加分だから、これもお父様にお渡しください。」

と言って風呂敷を私の机に置いて、キラは自分の席についてしまった。


然をチラッと見ようとしたら、手前にいたスミオと目があった。スミオは「助けて欲しい」の意味で受け取ってしまった様でキラに詰め寄ろうとした。

「おいキラ、お前が直接ネコの家に置けば良いだろう?」

「何で君が怒るの?関係無いと思うけど?」

キラが言い返した。以前のキラ黙っていただろうが思わぬ反撃にスミオが一瞬たじろいた。


「みんながみんな、鬼と同じに力持ってないんだよ。ちょっと考えたらわかるだろうが。」

その後、小声で「バカ」と続けた。

キラはスミオを見てないので気がついてない様だが、見ていて、更に耳の良い私にはしっかりと聞こえていた。

瞬間、然がスミオの首根っこをつかんで引っ張り、そのまま後ろの壁に投げつけた。


バンとすごい音がしたので教室のみんながスミオの方を見た。

然はアドルフの記憶を持っている。それで怒ってしまったのだろう。


「ぜぇー、ぁあアードルフ、落ち着いて。」

私は止めようとして、然と言いかけてしまい、それをごまかしてアドルフと言った。周りには私も動揺している様に見えているだろう。


「ソレはアドルフじゃない。」

キラが真っ直ぐにわたしを見て言う。

「今の問題はそこじゃない!!」

そんなことわかってるわよ!事実とは言え、今ややこしくなるようなこと言わないで欲しい。


スミオは投げられたショックのせいもあり、私やキラの話は入って無い様だ。

「す、杉下(すぎもと)、勘弁してくれよ。」

「謝る相手が違うだろ。」

許しをこうスミオに然がつめよる。


「いや、石見君の言う通り。気づかなくてごめんなさい。今日から私が直接運ぶ。」

そう言ってキラは机の上の風呂敷を、自分の席に置いて戻ってきた。そして然に詰め寄り、

「石見くんに謝りなさいね。そうとう痛かったはず。」

と然の面目を丸潰しにすることを言い出した。


「…すまなかった。」

「…いいよ。」

間を置いて謝る然に間を置いてスミオも間を置いて応えた。

そのあとすぐにアドルフは教室から出てしまったので、私はアドルフを追いかけた。

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