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嫌われ鬼娘と彼女に恋した─僕と己─  作者: ラーテル弓倉
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鬼娘2 こはくのおめめ

アドルフはドイツから来た転校生でお母さんは異国の人で、お父さんは日本人だそう。キラよりも少し背が低くて こげ茶色の髪にちょっと茶色がかった黄色い目をしてる。正直、カワイイ顔だと思うわ。


黒目、黒髪の日本の人間の中では目立つだろうけど、多種多様な動物や妖怪が人間に化け、人と同じ生活をしている昨今、色の違いなどは気に留めるヒトはいない。


動物たちのほとんどが元々の毛色が髪に出るので黒、白、様々な濃さの茶色がほとんどだ。

ウチのお父さんが白猫でそのまま人の姿を模せても白い髪のままだ。アタシはハチワレなので体は白い毛のままで黒黒とした髪をしているから体型から耳や鼻が猫のままでなく、完璧に化けられるなら人間と見分けがつかないだろう。




アドルフはアタシ達(特にキラ)、によく話しかけるようになり、自然と登下校を中心に三人一緒になることが増えていった。


キラの名前は知ってたのにアタシの名前を知らなかったから「ちょっと!」とは思ったけど、たしかに化け猫で祢呼(ネコ)って名前だからそのまんますぎて名前とは思われなかったって言われたら仕方ないか。


問題なく日本語を話すアドルフだけど、男の子なのに鯉のぼりを知らなかったのでアタシは驚いてしまった。転校するまでは独逸(ドイツ)にいたので日本ではあたりまえなことを結構知らないのも無理もないのかもね。家に入って靴を脱ぐようにはなったけど、未だにきちんと箸を持てずに叔母さんに怒られたって言ってたし。他国の習慣や(しつけ)って習得するのって結構時間がかかるのかもしれないわね。


「最近、雨ばっかりだよね。」

「この時期は梅雨だからね。」

「つゆ?」

アドルフの疑問にいつも答えるのはアタシの役目だった。

「梅の雨と書くの。由来は…」

けれどアドルフを憎からず思っているのか徐々にキラも疑問に答えることが増えてった。


アドルフは読めない漢字を必ずキラに教えてもらっていた。単に話すきっかけとして使ってただけかもしれない。それでも2、3ヶ月で私たちが習ってるところまで使いこなせるように勉強して、今までキラが読んで来た本を聞いて片っ端から読んでそれを話題に話そうとしてる感じだわ。

アドルフはキラを好いてるとして、キラはどう思ってるのかしら?





「二人にどうかと思って。」


もうすぐ夏季休業(夏休み)に入るって頃、帰宅中にアドルフがキラの家の前でアタシたちに贈り物をくれた。

「くし?」

アタシ持ってるよ…と言いかけたのを飲み込んだ。キラにだけ渡すと面と向かって「気がある」か「髪をどうにかしろ」と言う意味になってしまう。アドルフの本心はどちらか分からないがそれらを緩和させるために二人になのだろう。

ここは「綺麗な模様ね、ありがとう。」と無難なことを言っておいた。


「気が向いたら使ってよ、じゃあまた明日。」


よぽど恥ずかしかったのかそのまま逃げるように帰ってしまった。

鬼ってだけで敬遠する人も多いけどずっと独逸(ドイツ)にいたからかキラに対しての偏見が無いみたいね。


「ねぇ、」

アタシのアドルフへの評価が上がってると、珍しくキラの方から話かけてきた。

「なあに?」

「何か良い髪の整え方ある?」

「!」

ほう、やっとその気になったか。誕生日ごとにリボンをあげてたのにまったく使われず、更に周りがいくら言っても何もしなかったから、ちょっと安心したわ。

「じゃあ後からウチの家おいで。」

さすがに貴羅の家ではできないからね。




キラには何かの髪型を作る前に髪をとかしきるところから教えた。髪がグシャグシャのままに髪型を作っても上手くいかない。小さい時のアタシはいつもそれで失敗していた。

キラの場合はかなりボサボサだったが髪質なのか素直に整った状態になった。

ただ結うのは簡単にできたので三つ編みやリボンの使い方を教えると元が器用だったのか難なくする事ができたのでアタシが持っていた髪型の冊子をキラに渡した。


「内容は頭に入っているからあげる。あとお父さんが患者さんからもらったお菓子があるんだけど一緒に…」

「ありがとう。」


キラは礼を言うと冊子だけを持ってさっさと帰ってしまった。

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