鬼と猫娘6 面倒
荷物を持って娘を探しに行くと、人混みのなかで踞っていた。
これから大火事になってここら一帯を焼くだろう。それを凌ぐために移動させようと腕を掴んだら振り払われた。
「お父さんはあのまましとけばアレが持って行くと分かっててアドルフの体を放置するようにさせたの?」
めちゃくちゃ睨んでる。あぁ、うざったい。とは言え、今その問いを肯定するほど俺は馬鹿じゃない。
「なぜそう思った?」
質問に質問で返した。
「私がきちんと殺せてないと思っていたのなら、あの場で首を落としてもよかったでしょう?」
「他人が仕留めた獲物を横取りする程、落ちぶれて無ーよ。」
「………。」
もっともらしいことを言ったら静かになった。
「あと屋敷にはもう住まないからな。」
「え?」
「いずれあそこは鬼の土地ではなくなる。」
「…アレがいなくなったから?」
「そうだ、あれで最後だ。鬼の魂が全て無くなったら一年以内に国に返す約束になっている。」
あの子のことも、引っ越すことも、納得はして無いだろう。そして俺への不信感が増しただろう。だからっと言ってどんなに煩わしくても、置いてはいけ無い。でないと津耶の死が無駄になるからだ。




