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嫌われ鬼娘と彼女に恋した─僕と己─  作者: ラーテル弓倉
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鬼娘9 やってしまった

キラのことは気になるけどアタシは目の前にいた泣いてる女の子の方が優先だと思った。

アドルフがキラの方に行ってしまったってのもあるけれど彼女は鬼だ。


そう簡単には死なないのだ。




「さっきはびっくりしたね、大丈夫?」


ヒクヒクしながら腕が痛いと泣きながら女の子が応える。

まだ屋根に残っている瓦が落ちたら危ないので道の中央まで誘導させた。

「お名前、言えるかな?」

「…ふ、グスッ、ふでこ」

「ふでこちゃんだね。」

アドルフやキラのことが心配だったけど、今はふでこちゃんをお家まで送ることにした。道中、地震のせいでいつもと違う町並みに見え、アタシもふでこちゃんも戸惑ってしまった。今のところ、私の家へとの道と同じなのだが、今までにふでこちゃんを見かけた記憶がないので本当に正しい方へ進んでいるのか不安になってくる。

「ここ。」

家は橋の手前にあった。よかった、この子の家は倒壊をまぬがれてる。

いくら到着したからとは言え、このまますぐ別れるのは気が引けたのでお家の人もお話しした方が良いよね?とりあえず戸を開けて…と考えていたら

「ふでこっ!!」っと大きな声がした。

「お兄ちゃん!」

ゲッ、石見(いしみ)じゃん。


こいつは石竹くんや源平と一緒にいつもアタシやキラに石を投げたり、物を取ったりなどのイヤガラセをしてくるイヤなヤツだ。(一応、石竹くんが死んでからそういったことをしなくなったので石竹がやらせていたのか、頭になる人物がいなくなって小さくなっているのかは知らん。)


この二人は兄妹(きょうだい)らしい。

女の子が先までのことをざっと説明してくれた。石見から頭を下げるだけの形ではあるが、礼を受けたのでアタシはその場から立ち去った。




とにかく、今はキラとアドルフのところに行くべきだ。キラの家に…。キラの…


いつも見ていたキラの家が頭に浮かぶ。もちろん柵や門の外からしか見たことがないが、いつもきちんと手入れをされている庭は鬼が住んでいることを忘れてしまう。門には看板がかかっていて…


看板…




キラよりもアドルフの安否が気になった。あぁ、バカだ。アドルフをひとりで行かせてしまった。


あの子のことだ。キラに何かあったとしたら…




それに気づいたアタシは後ろ足だけではなく、前足も使って走り出した。

ブーツは走りにくい。脱ぐことも考えたがそれにかかる時間を考えるとそのまま走った方が早い。下駄や靴だったらこんなときは脱ぎ捨てれたのに…。




そんな後悔をしても遅い。アタシがキラの家についたときは全てが終わった後だった。

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