エピローグ
奇妙な夢から覚めて一ヶ月。通学路の途中で、あたしはブーちゃんのお世話をするため、あの公園に通うことが日課になっている。
大人びたメイクはやめ、年齢相応のナチュラルメイクに変えた。
ライブハウスには通っているが、夜遅くまで出歩くことはなくなった。
バスケ部をやめて空いた時間は、勉強やバイトに打ち込むことにした。
サトシ君のことは諦め、恋はまた次の機会を待つことにした。
あたしはブーちゃんから言われた言葉の意味を何度も考えた。確かに、あたしは粗暴なところがある。背伸びしてしまうところがある。物事を最後までやり遂げず、投げ出してしまうところがある。
だから、大人にならなくてはならない。自分はまだまだ子供だ。
今日は梅雨にも関わらず、雲一つない晴天。登校中、あたしは今日もブーちゃんの身体を膝にのせ、頭を撫でて話しかける。
「ブーちゃん。今日も暑いね。熱中症ならないように気をつけてね。じゃ、あたしは学校行くから。ブーちゃんも頑張ってね」
ブーちゃんの顔を見ると、ブーちゃんは少し微笑んだような気がした。
ブーちゃんと別れて学校に向かう途中、胸の中で言葉を紡ぐ。
───あたしはネコである。名前はハルだ。
自分は子供であることを自覚し、あたしは今日も大人への階段を上っていく。