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あたしは猫である。  作者: たかてぃん
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 あたしの軽率な行動のせいでブーちゃんが轢かれてしまった。

しかし、ここでパニックになってはいけない。

必死で自分に言い聞かせ、ブーちゃんに駆け寄った。


 まずい、意識がない。

四回、五回とブーちゃんの頭をポンポンたたいて呼びかけたが、全く反応がない。

不幸中の幸いか、かすかにだが息をしている。つまりまだ生きている。しかし出血が止まらない。

どうすれば良いか、パニックになりそうな心を律し、冷静に、冷静に考える。


 ここの場所はどこだろうか?今日ブーちゃんと話した中にヒントはないだろうか?

散らかった思考回路が一本の線となり、あたしは閃いた。


 そうだ、ここはお爺ちゃん家の近くだ!

昼間ブーちゃんに話した、イカそうめんをくれたお爺ちゃんの家はこのあたりだ。

お爺ちゃんはつい最近まで現役の獣医さんだった。

だから、お爺ちゃんちまでいけばなんとかなるかもしれない。


 しかし、ブーちゃんをどうやって運ぼうか。

十秒ほど考えたが、何も思い付かない。

出血も止まらず、意識不明の重症患者を前に迷っている暇なんてない。

あたしはブーちゃんをお姫様だっこのような形で抱え、二足歩行で歩くことにした。

当然ネコが二足歩行で歩くことすら有り得ないうえ、自分より重いネコを担ぐなんて無理難題であるため、二回、三回と崩れ落ちてしまう。


 やはり無理かと諦めかけていた四回目。

なんと、あたしはブーちゃんを抱え、二本の脚で立ち上がることに成功した!


 緊急事態でアドレナリンでも出ているのか、自分は今世界最強だと思えるぐらいの力が全身からあふれ出ている。

ネコ史上初の二足歩行で、風を切るように走る。地面を最大限の力で蹴りつける。

三番目の曲がり角を右折し、二軒目の民家に飛び込む。ここがお爺ちゃんちだ。


 ドンドン!ドンドンドン!

ブーちゃんの身体をそっと置き、猫パンチで玄関を何度も何度も叩く。

その音に気付いたのか、お爺ちゃんが玄関を開けた。


 「え?ネコが二本の脚で立ってる!?わしもついに老眼か?」


 「お爺ちゃんそれどころじゃないの!ブーちゃんが死んじゃう!」


 あたしが何を言っているか、お爺ちゃんには伝わらないことも忘れて叫ぶ。お爺ちゃんはぐったりとしているブーちゃんを見つけると、血相を変えて抱きかかえた。


 「もしかしてこのネコを助けろってことか?そういうことか?」


 不思議そうな表情を浮かべたあと、優しい笑顔を浮かべ、あたしの頭をそっと撫でた。


 「大丈夫。よく頑張ったな。中入って。安心しろ命に別状はない。後はなんとかするからな」


 あたしが家に入ると、お爺ちゃんはブーちゃんの手当てを始めた。

ブーちゃんを助けられた。良かった。本当に良かった。

安心感からか、あたしは急にぐったりと全身の力が抜け、意識を失った。

 

 

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