前世の記憶
……目を開ける。知ってるような、知らないような森だ。あの魔法陣は転移魔法陣だったのか。
周りを見渡す。360度全て木で埋め尽くされてる。
だが、1部だけ木の隙間に家らしき物が見える。とりあえず森に入って迷っても嫌だからあの家を訪ねよう。
見たことあるような気がするが。
コンコン
「あの〜。すみませ〜ん。どなたかいますか〜?」
む?留守なのかな?それともこんな森の中だから誰も住んでいな──。
「ほいほい。今行きますよー。」
お、人はいるみたいだ。と、ドアが開く。
……やべぇ。めちゃくちゃイケメンだ。金髪で短い髪。整った顔。身長は平均以上。まだ20代くらいだ。
「あの1泊でい「やぁ!久しぶり!ベル、元気してたー?」……はぁ?」
いや、急に久しぶりとか言われたから変な声が出ちまった。念の為に後ろを振り向く。
「違うよ!君だよ!」
やはり俺みたいだ。だが俺はこんな人は知ら……ない。はずだ。
「あの、会ったことあります?」
ありえないが一応聞いたみる。異世界に知り合いなんていないからありえないはずだ。
「うん!君の前世でね!」
……はい。もう意味がわかりません。
まぁ、1万歩譲って俺に前世があってこの人が俺の前世に会ったとしよう。だが何故俺がその前世の奴だとわかる?
「いや〜。わからない事だらけだろうけど、とりま中入ってよー。」
「は、はぁ。」
うん。そうだ、後で考えよう。(思考放棄)
彼についていって中に入る。中は外見と同じくログハウスのような見た目だ。掃除がしてあり手入れが行き届いている。とても綺麗だ。
居間みたいなところに案内された。座っていいと言われたのでソファに座る。お茶まで出してくれた。
「質問いいですか?」
「うん。オッケー。」
……この人テンション高いな。まぁいいや。
「あなたは誰?何故ここにいる?ここはどこ?前世とは?ベルとは俺の前世の名前か?」
怒涛の質問攻めだ。さぁ答えて貰おう。
「実はその質問全部一気にわかる方法があるよ。」
ほう。それは凄いな。是非やって欲しい。
「ならお願いします。」
「ほーい。なら移動するからついてきてー。」
移動?なんとなく小学校の頃に不審な人についていくなと教わったのを思い出した。
「……わかりました。」
そうして向かった先は地下室だった。
「ここで何をするんですか?」
中に入るとダンジョンで見た転移魔法陣よりふた回り程大きい。
……また、魔法陣かよ。見飽きたし、怖いんだが。
これが本当に答えになるのかわからないし。
だがくよくよしていても仕方ない!
そうして俺はまた魔法陣に踏み込んだ。
魔法陣が発光しだす。何が起きるのかと思っていたら唐突に頭に物凄い頭痛がくる。
「ア、アァァアァァ!」
だ、めだ、意識が、落ち、る。
そして俺は意識を失った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
知ってる天井だ。
前に数回見たことがある。
……全部思い出した。いや、掘り起こされたと言うべきか。
前世の記憶を。
確かにあの質問全てに答えがでたな。
あいつは大賢者エルビス・カルザン。
ここは中央大陸の6人の英雄の隠れ家的な場所。
そして俺の前世は────。
ガチャ
「お、起きてるね。では改めて久しぶり。
神速 ミシーク・ベルフ。」
あぁ、そうだ。俺の前世は6人の英雄の内の1人。
神速ミシーク・ベルフだ。
「そうだな。思い出したよ。久しぶり。大賢者エルビス・カルザン。」
身体をベッドから起こす。前世の記憶が戻って聞きたいことがもっと増えたよ。
「それで?あの時どうして前世が俺だってわかった?」
「それは僕のスキル 魂の記憶というやつでね。その魂が経験した記憶を全て見ることができるのさ。」
やっぱり、6人の英雄はチートだな。
「何故、俺が異世界に召喚され、あのダンジョンに行った?」
おそらく、関わっているのは聖女だろう。
「うん。大体ベルが考えてることと一緒だよ。聖女リアの運命操作でベルが召喚されたんだ。」
やはりか、まぁ確認だからな。
それで、1番聞きたいことは、
「なぁ、リリィは何処にいる?」
リリィとは俺の愛人だ。銀髪で目が黄緑の可愛い系。背丈は平均より下。本名はリリア・シルファ。
「……リリアちゃんは獣人大陸のガガルタダンジョンに封印してあるよ。」
は?何で封印?てか獣人大陸?
「まぁ、困惑するのも無理ないよ。でもリリアちゃんは望んで自ら封印されたんだ。」
どういうことだってばよ。
「なんでも、ベルがいないのが嫌なんだと。そして封印してベルが迎えに来るのを待ってるって。」
なら迎えに行ってあげなきゃな。てか照れるから辞めろよ。
「あと、俺は前世は神速だが、今は違う。今は速風 瞬という名前がある。そっちで呼んでくれ。」
「ほーい。了解ー。」
さて、ちょっくらリリィを迎えに行きますか。
「ん?何処に行くの?」
「何処って、リリィを迎えに行くんだよ。」
リリィが待ってるなら速く行かなきゃな。それとも何か問題が?
「ダンジョンの中だよ?瞬君は記憶が戻っただけでステータスはそのままだよ?でも前世の記憶があるからレベルを上げれば前世に近づいていくよー。」
……マジかよ、ステータスはそのままかよ。でもレベルを上げれば強くなると。
だが、1レベル上げるのが苦労するんだよな。
何かいい方法はないのか。
「方法ならあるぞ?」
何?そんな方法が?
「僕が魔物を造ろう。」
「出来るなら是非頼みたい。だが魔物は一体だけで十分だ。俺の為にならないからな。」
自分の強さは極力、自分で手に入れたい。
他人に頼っていては自分が廃るからな。
「それじゃ、頼む」