転機
春になると新入生を迎え、
私は二度目の一年生の担任になった。
夏休みを迎える頃は卒業した生徒達が
たまに遊びに来たりもしていたけれど、
冬休みを迎える頃にはそれもなくなった。
相変わらず菜々子とはあのバーがお気に入りで、
月に一度は必ず飲みに行っていたし、
それから偶然にヒラケイに会う事はなかった。
仕事場に合わせて引っ越ししたのかもしれないし
もちろん一年前にバイトしていた居酒屋は
辞めているだろうし、
二年間の内に一度しか
偶然なんてものはなかったんだから
会わない方がごくごく自然だと思う。
クラスの子達が二年生に進級する頃には、
私も随分とキャリアアップしていた。
夏休みが終わる頃、
姉妹校である地方転勤の話しが出て、
私はそれを快諾した。
転勤先の学校では、講師ではなく、
講師へのアドバイスやスキルアップ、
生徒達の就職サポートなど、
一つ上の立場で迎えられる事になった。
栄転、という事らしい。
菜々子と頻繁に会えなくなるのは寂しいけど、
まぁ、お互いに行き来するのは明確だった。
二度目の卒業式も式中は涙が止まらなくて、
謝恩会ではたくさんの言葉をもらって、
その後の二次会のビールは
やっぱりすごく美味しく感じた。
引っ越しの荷造りをしている時、
どうしても白い封筒を捨てられなくて、
文房具と一緒に段ボールにしまい込んだ。




