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願い
言い放ったとほぼ同時に、唇が重なった。
二度目のキス。
長い、口付け。
「嫌なら、逃げればいいから。」
ずるい。その言い方はずるい。
なんで、どうして、早く、振り払わなきゃ。
少しだけ離された唇が再び重なる。
片腕が解かれ、優しく髪を撫でた。
深く、深く、息苦しい程に、長く。
瞳を閉じると頬に涙が伝った。
「…もう、会う事もないから。」
掴まれた右腕は呆気ないほど簡単に振り解けた。
振り返る事なく小走りで家路を急いだ。
家の中に入ると、涙が止まらなかった。
でも、ヒラケイに言った事は嘘じゃない。
もう会う事はない、あってはいけない。
このまま時が過ぎればいいと願った。




