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頭痛
泣いちゃ駄目だ。理由がないから。
ここで泣いたりしたら、理由ができるから、
早くここを立ち去らなければ、そればかりを考える。
「くだらない事言ってないで、
ほら、だいたいヒラケイが何で先生の事。
好きになるタイミング、あったかな。
ないない。なかったよね。
ちょっと勘違いしてるだけだから、
早く忘れて、ね。」
ゆっくり歩き始めると腕を引かれる。
手袋をした手に、コートを着た腕。
「…本気で言ってんの。」
だからヒラケイの手の温度なんて分からない。
だけど、もう絶対に振り向かない。
瞬きをしたら、瞳に溜めた涙が溢れる。
ヒラケイの腕を振り払って早足で歩き始め、
しばらく進んだ所で少しだけ首を後ろに向けた。
そこにヒラケイの姿はもうなくて、
ポロポロと溢れる涙に自分の気持ちを確信した。
どうしよ、どうしよ。
そればっかりを頭の中に巡らせていた。
家に着いてから買った物をテーブルに置き、
シャワーを浴びて髪も乾かさないままに
ベッドに潜り込んだ。
翌日、頭痛で目が覚めた。
風邪をひいたのは明確だった。




