無意味
「ありがとうございましたー」
コンビニの夜勤バイトは、
ダラダラとしているイメージ。
明るい髪、ピアス、着崩した制服。
乱雑に入れられたワインボトルとピクルス。
どうでもいい事を考えながら、帰路を急ぐ。
先にお風呂に入っちゃおうと思いながらも、
家まではまだ歩いて15分程かかる。
「先生?」
背後からコートのベルトを軽く引っ張られて、
大袈裟に驚いた事が格好悪くて、
マフラーに顔を埋めて振り返るけど、
声で誰かなんてとっくに分かってた。
「びっくりした、冬でも変質者はいるんだからね。
驚かせないでよ、ヒラケイ。」
あー、そっか。
この辺に住んでるって言ってたっけ。
今まで会わなかったのが不思議だったのか、
なんで今日に限って会っちゃうのか、
神様なんて信じた事もないけれど
神様は意地悪だとマンガのように思った。
「気を付けて帰るんだよ、じゃあね。」
これでいい。
必要以上に関わらなければ、
話さなければ、触れなければ、
こんなモヤモヤした気持ちもなくなる。
「いや、ちょっと、待って。
何でそんな避けんの。
目も合わさないし、必要な事しか話さない。
さすがにそれはないっしょ。」
強く風が吹いて、さっきまで火照った身体が、
冷えていっているのが分かる。
小さく肩が震える。
じゃあ、どうしたらいいわけ。
教えてよ。
思わず声に出しそうになるのをグッと堪えた。
その代わり、声にならない思いが
瞳にどんどん溜まっていく。




